Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 心機能評価②

(S599)

僧帽弁輪変位(TMAD)は心機能指標になり得るか

Tissue mitral annular displacement(TMAD)is can be a heart function index

河野 裕樹1, 坊 直美1, 川端 直樹1, 岡部 佳孝2, 三田村 康仁2, 音羽 勘一2

Hiroki KOHNO1, Naomi BOU1, Naoki KAWABATA1, Yoshitaka OKABE2, Yasuhito MITAMURA2, Kanichi OTOWA2

1市立敦賀病院医療技術部検査室, 2市立敦賀病院循環器科

1Department of Cinical Laboratory, Municpal Tsuruga Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Municpal Tsuruga Hospital

キーワード :

【はじめに】
心機能評価には,左室駆出率・組織ドプラ法・左房容積評価などがあるが,近年更に新たな手法が開発されている.そのうちの一つTissue Mitral Annular Displacement(TMAD)は,角度非依存性の2Dスペックルトラッキング法に基づき,僧帽弁輪の心尖部方向への収縮運動を追従することで収縮機能評価を簡便に行う手法である.
【目的】
TMADは,他の指標と同様に左心機能評価として用いられるか否かを検討した.
【対象・方法】
2014年2月〜2015年12月で,当院で心エコー図検査を施行した患者の中から抽出した128例(男性82例,女性46例,平均年齢67.3±17.3)を対象とし,2Dスペックルトラッキング法(2D-ST)TMADを施行した.装置はPhilips社製iE33.TMADは同社製ソフトQLABによる解析で求めた.TMAD比較対象指標は,左室駆出率EF,TDI法によるE/E’,左房容積係数としそれらとの関係性を見た.また,各指標を,収縮障害群(LVEF50%未満),拡張障害群(LVEF50%以上かつE/E’が15以上かつ左房容積係数が23ml/m2以上),正常群の3群に分けTMADと比較した.
【結果】
TMAD%とEFは正の相関関係(rs=0.75,P<0.0001).E/E’とは負の相関関係(rs=‐0.51,P<0.0001),左房容積係数とは負の相関関係rs=‐0.41,P<0.0001)を得た.また3群との比較では,収縮障害群はTMADが有意な低値(6.4±2.3),拡張障害群が低値(11.9±3.5),正常群では14.5±2.8と異常群と比較し明らかに高値であることが分かった.
【考察】
TMADは収縮機能及び拡張機能の双方で相関関係にあることから,心機能指標として優れたパラメータになり得ると考えた.また,TMADが有意に低値であった場合は収縮障害の裏付けになり,高値である場合は心機能が正常であるケースが多いとの結論に至った.しかし,壁運動異常を有する症例や弁膜症などの影響は加味されていない為これら検討は今後必須であると考えられた.
【結語】
TMADは収縮性評価及び拡張性評価に有用であるとの結論に至った.今回得られた結果をもとに,TMADの目安を設定できるよう検討を重ねていきたい.