Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 症例報告③

(S595)

経食道心エコーにて診断した感染性心内膜炎による仮性大動脈瘤を形成した一例

A case of pseudoaneurysm of the aorta due to infective endocarditis diagnosed by transesophageal echocardiography

橋本 剛1, 鈴木 真事1, 大塚 健紀1, 横内 幸3, 山下 裕正2, 飯島 雷輔1, 原 英彦1, 尾崎 重之2, 諸井 雅男1, 中村 正人1

Go HASHIMOTO1, Makoto SUZUKI1, Takenori OTSUKA1, Sachi YOKOUCHI3, Hiromasa YAMASHITA2, Raisuke IIJIMA1, Hidehiko HARA1, Shigeyuki OZAKI2, Masao MOROI1, Masato NAKAMURA1

1東邦大学医療センター大橋病院循環器内科, 2東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科, 3東邦大学医療センター大橋病院病理診断科

1Division of Cardiovascular Medicine, Toho University Ohashi Medical Center, 2Division of Cardiovascular Surgery, Toho University Ohashi Medical Center, 3Department of Surgical Pathology, Toho University Ohashi Medical Center

キーワード :

症例は70歳代女性.多発性硬化症,糖尿病,慢性腎不全などで通院していた.大動脈弁狭窄症に対し3年前に自己心膜を使用した大動脈弁再建術を施行している.2015年5月発熱,嘔吐,下痢を主訴に受診し,急性胃腸炎の診断で入院した.抗生剤加療で一時軽快したが,炎症反応の増悪,血液培養より酵母様真菌の検出あり真菌による敗血症が考えられたが,感染源は不明であった.心拡大傾向認めたため,第17病日に経胸壁心エコー図検査施行したところ左房内に腫瘤様のエコー像を認めた.CTでは腫瘤像は血栓を疑った.血栓,腫瘍,疣贅などの鑑別のため第32病日に経食道心エコー検査を施行した.大動脈弁狭窄や大動脈弁口からの逆流症などの弁機能不全の所見は認めなかったが,2Dカラードプラ法では図Aのように左冠尖側のバルサルバ洞付近より大動脈と左房の間の閉鎖腔へ拡張期に血流の流出を認め閉鎖腔の中を旋回しているような所見であった.またさらに閉鎖腔内の旋回した血流は大動脈弁付着部直下の左室内へ拡張期に流入する所見も認めた.3Dカラードプラ画像をMultiplanar reconstruction(MPR)法で解析すると,図Bのように閉鎖腔内から見た所見では,左冠尖側の孔から入り込む血流とそのやや左室側の孔から大動脈弁直下に流出する血流をほぼ同時に確認することができた.また,左室側から見た所見でも左冠尖側から閉鎖腔内への血流と無冠尖と左冠尖の交連部直下あたりから左室内への血流を確認することができた.血行動態は大動脈弁逆流様であると考えられた.閉鎖腔は左房を圧排しており内部は一部壁在血栓のようにもみえる所見であったが膿瘍の可能性も考えられた.経時的な経胸壁心エコー図検査による観察では左房を圧排する閉鎖腔は徐々に拡大傾向を認め,左房内へ穿破する可能性もあるため外科的介入を検討したが,周術期のリスクが高いことなどから手術を希望されず保存的に加療した.全身状態は安定していたが,第165病日透析中の急性呼吸不全で死亡した.病理解剖にて左冠尖側に穿孔を認めた.また,左冠尖と無冠尖の交連部直下には疣贅の付着を認め,15×10mm程度の穿孔を認めた.経食道エコー検査の所見と同様に二つの孔を認め,どちらも閉鎖腔内へつながっていた.閉鎖腔と思われた腔は仮性瘤を形成しており,内部は一部血腫の付着を認めた.経食道心エコーにて診断した感染性心内膜炎による仮性大動脈瘤を形成した大動脈弁再建術後の一例を報告する.