Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 小児

(S590)

ファロー四徴症術後患者における左室拡張期運動エネルギー損失指標とMRI指標との関連

The impact of Diastolic kinetic energy loss on cardiac output in the patients with TOF comparative study of Vector-Flow-Mapping and cardiac MRI

齊川 祐子1, 4, 安河内 聰1, 2, 瀧聞 浄宏2, 島袋 篤哉2, 粟津原 信一3, 武井 黄太2, 田澤 星一2, 蝦名 冴1, 4, 柴田 綾4, 日高 恵以子4

Yuko SAIKAWA1, 4, Satoshi YASUKOCHI1, 2, Kiyohiro TAKIGIKU2, Atsuya SHIMABUKURO2, Shinnichi AWAZUHARA3, Kouta TAKEI2, Seiichi TAZAWA2, Sae EBINA1, 4, Aya SHIBATA4, Eiko HIDAKA4

1長野県立こども病院エコーセンター, 2長野県立こども病院循環器小児科, 3長野県立こども病院放射線科, 4長野県立こども病院臨床検査科

1Echocenter, Nagano Children’s Hospital, 2Department of Pediatric Cardioloty, Nagano Children’s Hospital, 3Department of Clinical Radiology, Nagano Children’s Hospital, 4Department of Clinical Labolatories, Nagano Children’s Hospital

キーワード :

【背景】
心機能評価において,心室の容積や駆出率を用いた報告は多いが,左室内の血流運動エネルギーが心機能に与える影響についての報告はない.
【目的】
Vector Flow Mapping(VFM)を用いて,ファロー四徴症術後患者(TOF)における,左室拡張期の血流運動エネルギー損失(dEL)とMRIから算出された心室の心機能指標や大血管の血流量,心エコー検査の各種心機能指標との関係について検討すること.
【方法】
対象は,MRIを撮像し,前後半年以内にVFMを記録したTOF 32名(年齢;13.4±6.1歳)および正常小児(N)16名(年齢;8.9±4.6歳).使用した心臓超音波装置はProsound F 75(日立・アロカ社),心尖部長軸断面の2DカラードップラをVFM解析用に記録し,保存.Off-line外部解析ソフトDAS-RS1(日立・アロカ社)(Itatani K et al)を用いて,拡張期の左室内各2次元座標軸上の血流運動エネルギーを算出し,その差分から拡張期血流運動エネルギー損失(dEL)を算出.また僧帽弁通過血流から算出した拡張期左室流入エネルギー(KEin)を算出しdEL/KEinを求めた.
MRI装置Philips社製マルチバ1.5Tを使用し,PC Cine Q Flow法を用いて,血流量および各心室の容積を測定し,dEL/KEinと比較した.
【結果】
TOF群は,N群に比しdEL/KEinは0.19±0.17 vs 0.062±0.029(mean±SD)と有意に高値を示した.
TOF群におけるdEL /KEinと他の心機能指標との検討では,dEL/KEinを平均値0.19以上と0.19未満群に分けて検討した結果,dEL/KE inが0.19以上のTOFは,左室心係数(LVCI)が低下し,肺動脈弁での駆出量(PASV)は高値であった.
体表面積で補正した左室拡張末期容積(LVEDVi)や左室駆出率(LVEF)では,2群間に有意差は認められなかった.
【考察】
dEL/KEinを左室拡張期エネルギー損失の指標として考えると,拡張期の左室エネルギー損失が大きいほど収縮期に使用される駆出エネルギーが低下し,LVCIの低下に寄与していることが考えられる.一方,高dEL/KEinと高肺動脈弁通過血流量の成因としては,右室機能が保たれている範囲内では肺動脈弁逆流が多いほど次の肺動脈弁通過血流は増加すると考えられる.
【結語】
TOFにおける左室拡張期血流運動エネルギー損失は,左室の容積や駆出率とは独立して左室の心拍出に影響を与えている.