英文誌(2004-)
一般口演
循環器 弁膜症
(S571)
重症大動脈弁狭窄症患者における左室流出路の計測:CTと心エコー図検査の比較検討
Measurement of left ventricular outflow tract in patients with severe aortic valve stenosis:comparison with CT and echocardiography
坂本 佳子
Yoshiko SAKAMOTO
佐賀大学循環器内科
Department of Cardiovascular Medicine, Saga University
キーワード :
【背景】
重症大動脈弁狭窄症(AS)患者に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の術前には,大動脈基部,大動脈弁の評価とともに左室流出路(LVOT)の評価も重要である.
【目的】
TAVI術前のLVOTの計測について,CTと2次元経胸壁心エコー図検査(2DTTE),2次元経食道心エコー図検査(2DTEE),3次元経食道心エコー図検査(3DTEE)を用いて計測し比較検討した.
【対象・方法】
当院でTAVI術前にTTEとTEEを施行した重症AS患者31例(平均年齢83.1±4.8歳)を対象として,CT,2DTTE,2DTEE,3DTEEを用いてLVOT径とLVOT断面積の計測を行った.2DTTEと2DTEEでは,LVOT径から円の方程式(半径×半径×π)を用いてLVOT断面積を算出した.3DTEEではplanimetry法と楕円の方程式(長半径×短半径×π)を用いて断面積を計測した.
【結果】
LVOT径はCT 21.0±1.7 mm(長径25.5±1.9 mm,短径17.3±1.9 mm),2DTTE 19.2±1.6 mm,2DTEE 18.1±1.8 mm,3DTEE 19.8±1.7 mm(長径22.9±1.8 mm,短径17.2±2.1 mm)であった.LVOT断面積はCT 349±56 mm2,2DTTE 293±48 mm2,2DTEE 258±52 mm2,3DTEE(planimetry)310±55 mm2,3DTEE(長半径×短半径×π)311±53 mm2であった.CTで計測したLVOT断面積との比較では,2DTTE−56±63 mm2,2DTEE−90±56 mm2,3DTEE(planimetry)−39±31 mm2,3DTEE(長半径×短半径×π)−38±36 mm2といずれもCTより有意に小さかった.
【結論】
LVOT径では,CTのLVOT短径と3DTEEのLVOT短径は有意差を認めなかった(p=0.96).LVOT断面積は,CTと比較し,TTEとTEEの断面積は有意に小さかったが,2DTTEと2DTEEは3DTEEより更に小さい面積であった.2DTTEと2DTEEのLVOT径はCTのLVOT短径に近い値になるため,円の方程式で面積を計算すると過小評価になる.大動脈弁口面積の推定で用いる連続の式を使用する時は,LVOT断面積を過小評価している可能性も考慮する必要があると考える.