Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
循環器 心房細動

(S565)

心房細動における左室拡張機能評価

Assessment of left ventricular diastolic function for patients with atrial fibrillation

田中 梨紗子1, 杉本 邦彦1, 犬塚 斉1, 伊藤 さつき1, 加藤 美穂1, 東本 文香1, 神野 真司1, 石井 潤一1, 山田 晶2, 尾崎 行男2

Risako TANAKA1, Kunihiko SUGIMOTO1, Hitoshi INUDUKA1, Satsuki ITO1, Miho KATOU1, Ayaka HIGASHIMOTO1, Shinji JINNO1, Junichi ISHII1, Akira YAMADA2, Ikuo OZAKI2

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学循環器内科

1Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital, 2Cardiology, Fujita Health University

キーワード :

【はじめに】
左室拡張機能評価は血行動態の評価に重要な役割を担っている.しかし,心房細動症例では心拍ごとに波形が変動し,詳細な評価が困難である.
【目的】
発作性心房細動(PAF)及び慢性心房細動(AF)患者における左室拡張機能について,従来の指標を用いて評価可能か検討する.
【対象】
電気的肺静脈隔離術(PVI)時に左房圧(LAP)を記録し得た117例を対象とした(PAF:58例(平均年齢64歳),AF:59例(平均年齢63歳)).また,当院の心エコー図検査(TTE)にて正常と判定された95例(平均年齢63歳)を対照とした.
【方法】
TTEにて左室拡張機能の指標(E,A,E/A,e’,E/e’)及び心房の大きさ(左房前後径(LA),心尖部四空像での右房径(RA4C)と左房径(LA4C),左房容積係数(LAVI))とLAPを比較した.
【結果】
LAPはPAF群よりAF群で有意に高値であった(6.9±4.1mmHg vs 9.9±4.6mmHg, p<0.01).PAF群ではLAPとE(r=0.26,p<0.01),E/A(r=0.42,p<0.01),E/e’(r=0.56,p<0.01)で有意な相関を認め,AF群ではLAVI(r=0.34,p<0.05)で有意な相関を認めた.PAF群においてE/A>1.5の症例のうちLAP≧15mmHgであったのは21例中1例(5%),E/e’>15の症例のうちLAP≧15mmHgであったのは10例中2症例(20%)であった.PAF群では,E/A(1.4±0.72 vs 1.0±0.3,p<0.01),E/e’(11.4±4.5 vs 9.1±1.9,p<0.01),LAVI(36.0±18.8ml/m2 vs 23.4±4.9ml/m2, p<0.01)と正常群と比較して有意に大きく,A(59.2±21.8cm/sec vs 70.0±17.2cm/sec, p<0.01)は有意に小さかった.また,PAF群では,LA(35.6±7.6mm vs 32.2±4.2mm, p<0.01),RA4C(32.5±6.1mm vs 30.6±4.8mm, p<0.05),LA4C(39.6±7.5mm vs 35.8±5.0mm, p<0.01)は正常群と比較して有意に拡大していたが,LA/RAには有意な差を認めなかった(1.2±0.2 vs 1.2±0.2mm, NS).
【考察】
PAF群では従来の指標とLAPには有意な相関関係を認めたことから,従来の指標でもある程度のLAP予測は可能であると考えられた.しかし,今回対象としたPAF群においてはE/A>1.5,E/e’>15であってもLAPが上昇している症例は少数に留まった.また,PAF群と正常群を比較すると,e’に有意差を認めなかったことから,左室弛緩能に差は無いが,E波は上昇していることから,正常群に比べやや左房圧が上昇しているものの正常範囲に留まる程度であることが示唆された.また,PAF群ではA波の減高が認められたが,実際には左房圧の有意な上昇は認められなかったことから,A波の減高は心房筋の収縮力低下に起因している可能性が示唆された.PAF症例ではTTE施行時に洞調律である場合が多く,通常の洞調律例と混同されるが,両心房の同比率での拡大をひとつの鑑別点とすることが有用である可能性が示唆された.
【結語】
PAFにおいても,従来の拡張機能評価の指標を用いて左房圧上昇が推定できる可能性が示唆されたが,cut-off値は従来のものを用いると左房圧を過大評価する可能性も示唆された.