高木 亮¹, 岩崎 亮祐², 富安 謙太郎², 吉澤 晋¹, 梅村 晋一郎²

Ryo TAKAGI¹, Ryosuke IWASAKI², Kentaro TOMIYASU², Shin YOSHIZAWA¹, Shin-ichiro UMEMURA²

¹東北大学工学研究科, ²東北大学医工学研究科

¹Communications Engineering, Tohoku University, ²Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
本研究グループでは，強力集束超音波（HIFU : High-Intensity Focused Ultrasound）治療における通常の超音波モニタリングにおいて，HIFUノイズの連続性に着目した超音波RF信号処理により，HIFUノイズを選択的に除去する手法を検討してきた．しかしながら，この手法において，近年注目を集めている高速スキャン照射等の位相変調照射時のHIFUノイズ除去には適用できないという問題点があった．本研究では，位相変調照射時にもHIFUノイズのみを選択的に除去できる手法を提唱し，その有効性を検討した．
【方法】
本研究では，HIFU位相変調照射時に，HIFUの位相変調の周期性に着目し，ある時相に，ガイド用超音波を照射せずにHIFU応答のみを取得する（RF信号①）．次の周期の同じ時相では，通常通り，ガイド用超音波を照射して，HIFU応答と超音波パルス応答を照射する（RF信号②）．この2回のRF信号取得間の組織変動（移動）がガイド用超音波の波長に比べて十分小さければ，RF信号②からRF信号①を差っ引くことにより，HIFU応答のみを差っ引き，超音波パルス応答のみを抽出することができると考えられる．HIFU焦点を6点に高速スキャンさせる位相変調照射時に本アルゴリズムを適用し，本手法のHIFUノイズ除去効果を検討した．使用した生体模擬試料は鶏胸肉である．
【結果・考察】
Fig. 1にHIFUノイズ除去前（a）と除去後（b）のB-mode画像を比較した結果を示す．本手法を適用することにより，HIFU位相変調照射時において，HIFUノイズのみが選択的に除去でき，組織エコーのみが抽出できることが確認できた．また，Fig. 1（c）に示すように，受信超音波RF信号の周波数解析を行うことで，HIFUノイズ成分が選択的に除去できることが確認できた．しかしながら，HIFU照射開始時の音響放射圧により，組織が大きく変動する場合にはHIFUノイズ除去効果が低減した．
【結論】
本手法が高速スキャン照射等のHIFU位相変調照射時に，HIFUノイズを除去する手法として有効であることが示された．今後は，組織変動に対して，よりロバストなノイズ除去手法を検討していくことが必要である．