Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 組織性状評価

(S557)

感染性難治性潰瘍モデルラットにおける生体音響特性解析

Bioacoustic chracterization for bacterial infection of intractable rat ulcer

光田 益士1, 大村 眞朗2, 吉田 憲司3, 久保 貴史1, 穂積 直裕4, 吉田 祥子5, 小林 和人6, 山口 匡3

Masushi KOHTA1, Masaaki OMURA2, Kenji YOSHIDA3, Takabumi KUBO1, Naohiro HOZUMI4, Sachiko YOSHIDA5, Kazuto KOBAYASHI6, Tadashi YAMAGUCHI3

1アルケア株式会社医工学研究所, 2千葉大学大学院工学研究科, 3千葉大学フロンティア医工学センター, 4豊橋技術科学大学国際協力センター, 5豊橋技術科学大学環境・生命工学系, 6本多電子株式会社研究部

1Medical Engineering Laboratory, Alcare Co. Ltd., 2Graduate School of Engineering, Chiba University, 3Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 4International Cooperation Center for Engineering Education Development, Toyohashi University of Technology, 5Department of Environmental and Life Sciences, Toyohashi University of Technology, 6Research Department, Honda Electronics Co. Ltd.

キーワード :

【はじめに】
皮膚感染に対する簡易かつ定量的な診断の可能性の1つとして,組織性状変化に応じた超音波定量診断が挙げられる.定量診断では,潰瘍を発症した皮膚下組織が再生し線維化を生じる過程において,細菌による炎症および壊死を生じている程度が指標となりうる.超音波診断におけるこれらの指標を得るためには,対象となる生体組織の持つ固有音響特性を知る必要があるため,本報告では潰瘍モデルラットにおける音響特性解析を行った.
【方法】
潰瘍を生じたラットについて,非感染,クリティカルコロナイゼーション,および感染モデルの3種を計測対象とした.非感染モデルは,皮膚を損傷させた後に,菌を塗布せずに治癒させる.また,損傷部表面のみに菌を塗布することで,体表面上のみに感染を生じた状態であるクリティカルコロナイゼーションモデルを,表面に加えて内部にも菌を注入することで感染モデルを作成した.それぞれの個体における摘出組織から複数枚の薄切切片を作成し,各切片について中心周波数100 MHzの超音波で計測し,音速分布を算出することで,潰瘍部の三次元の組織構造と音速との対応関係について解析した.
【結果と考察】
3種のモデルラットにおける解析結果の一例を図に示す.非感染モデルにおいては,音速分布は一様に1500 m/s程度となっており,潰瘍部においてコラーゲンが産生し,増殖することで治癒に向かっていることが分かる.一方で,クリティカルコロナイゼーションモデルでは,組織表面において局所的に70 m/s程度音速が速い部位が確認できる.また,感染モデルでは,表面に加えて潰瘍内部においても音速が速い部位があり,それぞれのモデルについて病理像上で壊死組織が確認できる部位との一致が見られる.
高周波超音波計測において,潰瘍におけるコラーゲンと壊死組織での音速が異なることが確認されたことから,超音波診断においてもこの差異を検出できる可能性が示された.エコー信号に対しての特徴検出法の確立および音響インピーダンス解析を同時に実施しており,これらを併せて定量診断技術を実現する.
本研究の一部は豊橋市イノベーション創出等支援事業の支援を受けている.