Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 画像化技術

(S554)

生体内の音響的不均質が超音波B像のスペックルパターンに与える影響

The effect of acoustical heterogeneity on the speckle patttern of medical ultrasound images

池田 貞一郎, 高野 慎太, 石原 千鶴枝, 鱒沢 裕

Teiichiro IKEDA, Shinta TAKANO, Chizue ISHIHARA, Hiroshi MASUZAWA

株式会社日立製作所研究開発グループヘルスケアイノベーションセンタ

Center for Technology Innovation - Healthcare, Hitachi Ltd. Research & Development Group

キーワード :

【背景】
生体内の不均質散乱が超音波B像の劣化の重要な要因の一つであることはよく知られている.不均質散乱の影響を何らかの装置内信号処理アルゴリズムで補償することで,より高精細な超音波像を生成しようとする試みは,超音波モダリティの高画質化の主題目の一つとして多数の研究機関において古くから研究が行われており,たとえば位相収差補正,適応ビームフォーミングなどの検討がある.一方これら適応的なB像劣化補償手法は場合によっては必ずしも良好に働かないことも分かってきている.その理由の一端には,生体内の不均質散乱の影響がどのようなメカニズム・機序をもって超音波B像の劣化をもたらすか,ひいては,超音波像のスペックルパターンがいかなる物理的機序によって決定されるか,についても完全に明らかになっているとは言えない現状がある.
【目的】
本報告では不均質散乱を模擬した2種類のシミュレーションモデルにより生成される超音波像のスペックルパターンの比較検討を行う.これにより,生体内の不均質散乱の影響を明らかにし,より高精細超音波像を得るための手法の開発に資することを目的とする.
【手法】
検討には以下の2つのシミュレーションモデルを用いた.一つは連続体媒質中に点散乱体が配置された数値モデル中の音波伝搬モデルである.もう一方は,弱散乱仮定の音波伝搬モデル(Field II)である.これらの比較検討により,音波が生体中を伝搬しながら波面歪みを生じることに起因する超音波像の劣化の様態を抽出することを試みる.
【結果】
図の(a),(b)は連像体媒質モデルの結果である.(a)は不均質散乱がない場合,(b)は連続体媒質中の音速に場所ごとで最大で±3%の偏差のある場合の結果である.また,(c)は弱散乱体仮定の点散乱体の結果であり,13個の強反射率の点散乱体の周囲に,乱数的に位置・強度を設定した微小散乱体が散りばめられたモデルとなっている.図(b),図(c)のそれぞれにおいて,超音波のBモード像と類似のスペックル状模様が観察される.ここで,図(b)のスペックル状模様を構成する物理的要因は音波伝搬に伴う波面の乱れ・歪みであり,一方で図(c)では不規則配置された散乱体構造そのものである.すなわち,生体内においてはこれらの2要因が同時に存在するため,超音波像のスペックル分布もまた双方の影響が混在した複雑なメカニズムで生成されていることが示唆される.