Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 画像化技術

(S553)

非線形型サプレッション処理を用いた適応ビームフォーマ

Development of Adaptive Beamformer using Non-linear Suppression Processing

渡邊 泰仁1, 津島 峰生1, 赤羽 睦弘2, 小笠原 正文2

Yasuhito WATANABE1, Mineo TSUSHIMA1, Mutsuhiro AKAHANE2, Masafumi OGASAHARA2

1コニカミノルタ株式会社開発統括本部要素技術開発センター, 2コニカミノルタ株式会社ヘルスケア事業部

1Corporate R&D Headquaters, KONICA MINOLTA Inc., 2Healthcare Business Unit, KONICA MINOLTA Inc.

キーワード :

【はじめに】
近年,最小分散アルゴリズムに基づいた適応ビームフォーマが多数報告されている.最小分散アルゴリズムのような線形型の適応ビームフォーマは一般的にピーク性能において狭指向で高いサイドローブ抑圧効果をもたらす反面,膨大な処理演算を伴う上,伝達特性の変化に敏感で追従性や安定性に課題がある.我々は,位相情報を使わず伝達特性変化にロバストな非線形型サプレッション処理を超音波のビームフォーマに適用し,分解能の向上とノイズ低減効果が得られることを確認したので報告する.
【対象と方法】
提案手法では,ロバスト性の担保と適応ビームフォーマの高性能化(狭指向で高いサイドローブ抑圧効果)を両立させるため,まず従来の遅延加算信号を生成し,その遅延加算信号に対して非線形型サプレッション処理を行う.サプレッション処理は,隣接する3つの遅延加算信号を利用する.隣接する3信号のうちの左右の信号の減算により,中央の主ビームに感度を持たない参照ビームを生成し,次に参照ビームの遮断域を中央のビームの形状に一致させるために中央のビームと参照ビームを乗算し合成ビームを生成する.最後に,パワー領域演算により算出した係数に基づいて中央のビームから合成ビームを減算することで出力信号が生成される.パワー領域演算により,位相情報を使用しないサプレッション処理は伝達特性変化にロバストで,また処理そのものを遅延加算信号に対して行うため,演算データ数は少なくなり処理演算量の大幅な削減が実現できる.参照ビームおよび合成ビームは中央の主ビームに感度を持たず,それを中央のビームから減算処理を行うことから,本手法のビームフォーマは狭指向で高いサイドローブ抑圧効果を実現している.
【結果】
図は実験により得られた乳房超音波診断ファントムに対して適応ビームフォーマの適用有無を比較した画像である.適応ビームフォーマによる分解能の向上とノイズ低減が確認できる.
【考察】
隣接する遅延加算信号に対して非線形型サプレッション処理を超音波のビームフォーマに適用することで,ビームの鋭角化とサイドローブ抑圧効果による分解能の向上とノイズ低減が確認できた.
【結語】
非線形型サプレッション処理は位相情報を使わないことから伝達特性変化に強いため,生体においても有効に作用することが期待される.今後は,生体へ適用し,本手法の臨床的な有効性の確認を行う予定である.