Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 超音波計測システム

(S551)

逆位相2焦点による細径カテーテルの誘導実験の考察

Discussion of thin catheter bending using two foci with inverse phases

望月 剛, 鈴木 俊哉, 鶴井 信宏, 宮澤 慎也, 澤口 冬威, 桝田 晃司

Takashi MOCHIZUKI, Toshiya SUZUKI, Nobuhiro TURUI, Shinya MIYAZAWA, Toi SAWAGUCHI, Kohji MASUDA

東京農工大学大学院生物システム応用科学府

Graduate School of Bio-application & Systems Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology

キーワード :

【背景】
我々は抗がん剤治療等の治療効果向上と副作用軽減を目標とし,音響放射力を用いてがん組織の栄養血管(目標:直径1mm以下)に極細カテーテルを挿入し,局所に高濃度の薬剤などを送達するシステムの開発を行っている.既発表ではカテーテルの側面方向から超音波の音響放射力により“押す力”を主に利用するものであった.
【目的】
人体の血管の多く,特に動脈は体の中心部から体表に向けて走行しているために,それらの血管に挿入されたカテーテルは体表に設置した超音波振動子面に対して垂直になる状況が生じ,この場合にはカテーテルの側面を押す方法のみでは制御に限界がある.そこで我々はそのようなカテーテルと音源の位置関係でも,カテーテルの先端を変位させるための方法を検討している.本発表では逆位相2焦点音場を利用したカテーテルの屈曲方法とそのメカニズムについて検討を行ったので報告する.
【方法】
外径0.2 mm,内径0.05 mmでPFAを材質とする極細カテーテルを水中に配置し,その先端から60 mmの位置に,カテーテル軸と素子面が垂直になるように,256素子の2次元超音波アレイ(周波数1 MHz)を配置した.更に音圧のピーク値が180 kPa-ppで4mm離れた逆位相2焦点を,カテーテルを挟むように形成した.この状態から2焦点の位置をアジマス方向に移動させ,カテーテルの様子を観察した.ここで照射音波をバースト波とし,Duty比を変化させて,カテーテルの変位を比較した.
【結果】
上記の実験の結果,バースト波の繰り返し時間10 msでDuty比50%の場合,カテーテルの先端を最大約0.19mm変位させることに成功した.またDuty比が50%以下の場合は,カテーテルの変位はDuty比に比例することも確認した.このことから,今回のカテーテル誘導法ではカテーテルに掛かる力が超音波エネルギーに比例することが示唆された.
【結論】
本研究では,従来方法では不可能であった,極細カテーテルが超音波振動子面に対して垂直の位置にある場合でも,その先端を屈曲させることができ,更にバースト波のDuty比を調整することで,カテーテルの変位を調整できる可能性を示した.