Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 組織弾性・性状評価

(S546)

マウス肝臓内における脂肪および線維の音響インピーダンス解析

Acoustic impedance analysis of lipid droplet and fiber structure in mice liver

伊藤 一陽1, 吉田 憲司2, 丸山 紀史3, 山口 匡2

Kazuyo ITO1, Kenji YOSHIDA2, Hitoshi MARUYAMA3, Tadashi YAMAGUCHI2

1千葉大学大学院工学研究科, 2千葉大学フロンティア医工学センター, 3千葉大学医学研究院

1Graduate School of Engineering, Chiba University, 2Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 3Graduate School of Medicine, Chiba University

キーワード :

【1.目的】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の早期診断法として超音波が有効視されているが,脂肪沈着の有無についての判定は高精度化してきている一方で脂肪肝とNASHの弁別が困難であるため,確定診断には肝生検に頼らざるを得ないのが現状である.そこで本研究では,病態によって異なる肝臓内の脂肪酸種を超音波で同定するための技術を開発し,併行して提案している線維化の判定法と同時使用することで超音波によるNASHの高精度診断を実現することを目指している.本報告では,エコー信号の性質を決定する主要因の一つであり,生体組織固有の物性値である音響インピーダンスに着目し,肝組織内に脂肪酸が存在した状況と線維化を生じた状態における音響インピーダンスを超高周波超音波で計測し,組織構造との対応関係について解析した.
【2.対象と方法】
株式会社ステリック再生医科学研究所において作成した,正常肝(6週齢,3頭),脂肪肝(6週齢,6頭),NASH肝(8週齢,6頭)および硬変肝(12週齢,6頭)のSTAMマウスについて,計測直前に麻酔下で肝臓を摘出し,瀉血処理後に計測を実施した.計測機器は本多電子株式会社製のバイオ超音波顕微鏡システム(AMS-50SI)を改良し,開口方向の分解能が6μm程度である中心周波数250 MHzのZnO振動子を組み込んで使用した.
肝臓試料はポリスチレンプレート上に設置され,水を介して下から250 MHz振動子を2次元走査することで試料表面からのエコー信号の三次元データを取得し,各走査線におけるエコー強度から音響インピーダンスを算出した.各走査線のエコーデータは8 bitのデジタイザを用いて2 GHzで深度150μm分がサンプリングされており,1.2 mm×1.2 mmの範囲を300 pixel×300 pixelの情報として取得している.また,各試料の組織構造を確認するために,同試料を4μmに薄切し,HE染色およびマッソントリクローム染色を施した.
【3.結果と考察】
脂肪肝とNASH肝のそれぞれの音響インピーダンスの二次元分布像において,脂肪滴に類似したテクスチャパターンが認められ,病理組織像との対応が確認された.また,脂肪滴内の音響インピーダンスは,肝臓中の多くを占める平均的な音響インピーダンスに対して低値となるものと高値になるものがあることが確認された.これまでの検討において,中心周波数が80 MHzの超音波振動子を用いて複数種の脂肪酸の音響インピーダンスを算出した結果でも同様の傾向が示されていることから,今回計測した肝臓においても複数種の脂肪酸が存在していることが考えられる.
一方で,NASH肝および硬変肝の計測結果において,線維特有の音響インピーダンスを二次元分布像から見出すことはできなかった.同個体の病理組織像においても強い線維化を確認することができなかったため,対象疾患のマウスモデルを追加しての再検討が必要である.しかし,計測した4種類のモデル(正常肝・脂肪肝・NASH肝・硬変肝)の音響インピーダンスの平均値を比較すると,正常肝と比較して脂肪肝およびNASH肝では低値であるのに対して,硬変肝は高値となったことから,肝臓全体としては炎症および軽度な線維化の影響が物性変化として表れていると言える.
【4.謝辞】
本研究の一部はJSPS科研費15H03030,25460674の助成を受けた.