Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 マイクロバブル

(S544)

シスプララチンデリバリーの効果が及ぶ距離

Ultrasound-mediated cisplatin delivery in 3D culture with various thicknesses

佐々木 東1, 工藤 信樹2, 中村 健介1, 森下 啓太郎1, 大田 寛1, 滝口 満喜1

Noboru SASAKI1, Nobuki KUDO2, Kensuke NAKAMURA1, Keitaro MORISHITA1, Hiroshi OHTA1, Mitsuyoshi TAKIGUCHI1

1北海道大学獣医学研究科獣医内科, 2北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

1Veterinary Internal Medicine, Hokkaido University, 2Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Scinece and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【目的】
超音波とマイクロバブルによる抗がん剤の作用増強はin vivoでも示されてきた.しかし,抗がん剤がどれくらい遠くまで届くようになり,腫瘍細胞内に取り込まれる薬剤量がどれくらい増え,その結果としてどのくらいの範囲で抗がん剤の作用が増強され,全体としての抗腫瘍効果に繋がるは明らかではない.これらを明らかにすることはin vivoでの機序解明につながるため,超音波とマイクロバブルによるドラッグデリバリー技術を臨床応用する上で重要である.我々はこれまでに厚み1 mmの3次元培養を用い,シスプラチンの作用増強を検討してきた.今回は3次元培養の厚みを変え,超音波とマイクロバブルによる抗がん剤の作用増強が確認できる範囲(厚み)を検討した.
【方法】
膀胱癌株細胞UM-UC-3を含むⅠ型コラーゲン溶液を35 mmディッシュに異なる溶液量で塗布した.培養面積がおよそ10 cm2であることから,溶液量を10で割った値をそれぞれの厚さ(mm)と見なした.2日間培養後,抗がん剤シスプラチンと50倍希釈のソナゾイド®(第一三共)存在下で超音波を照射した.超音波は中心周波数1 MHz,デューティ比50%(500パルス,繰り返し周波数1 kHz),強度80 mW/cm2で,1分間照射した.1回の超音波照射後シスプラチンを含まない培地で4日間培養を続け,細胞を回収してDNA量により細胞生存率を算出した.
【結果】
コラーゲン溶液量50μLからスタートしたところ,溶液量が少ない場合には超音波とバブル単独(シスプラチンなし)の効果が確認された.また,溶液量を増やしていくと,シスプラチンと超音波,マイクロバブルの併用の効果は減弱した.
【考察】
今回の条件下では,超音波とマイクロバブルによるシスプラチンの効果増強は,マイクロバブルとゲルの接触面から比較的狭い範囲に留まった.マイクロバブルがゲルの中には浸潤していかないため,キャビテーションの影響はバブルの近傍に限られたと考えられる.今後は,ゲル及び細胞内のシスプラチンを定量することで,殺細胞効果との関連を明らかにする予定である.