Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 生体作用

(S538)

細胞への気泡付着条件と足場層硬さがソノポレーションによる損傷と修復に与える影響

Effects of bubble adhesion and scaffold stiffness on damage and repair of sonoporated cells

磯野 朱音, 工藤 信樹

Akane ISONO, Nobuki KUDO

北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduated School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【背景・目的】
我々は,気泡が細胞に付着した条件でパルス超音波を照射することで細胞に薬剤や遺伝子を導入するin vivoソノポレーションの実現を目的に検討している.これまで,柔軟な足場層に培養した細胞では,ソノポレーションによる細胞損傷率が著しく低下し,その原因が柔軟な足場層近傍での微小気泡のふるまいの変化にあることを明らかにしてきた.本報告では,細胞への気泡付着と培養足場層の硬さの違いに起因する気泡運動変化が細胞膜損傷と修復に与える影響を比較・検討した結果を報告する.
【方法】
柔軟な細胞足場層には,濃度15%のアクリルアミドゲルを用いた.細胞接着性を付与するためにゲル表面にコラーゲンコート(Cellmatrix type I-C,新田ゼラチン)を施し,その後ヒト前立腺がん細胞を培養し,観察サンプルとした.また,比較のためにカバーガラス上に細胞培養したサンプルを作成した.細胞面を下にしたサンプルをバブルリポソームの懸濁液中に浸し5分程静置することで気泡を細胞に付着させた.作成したサンプルを水槽の底面に設けた観察チャンバに設置し,倒立型顕微鏡で観察した.細胞の核上または仮足上に気泡が1つだけ付着し,その周辺に他の気泡が存在しない細胞を観察対象とした.ブラウン運動をしている気泡を非接着気泡,静止している気泡を接着気泡と定義した.観察チャンバには細胞膜損傷を検出する蛍光試薬としてPI(propidium iodide)を10 μg/mlの濃度で加えた.集束型超音波振動子で発生した中心周波数1 MHz,最大負圧1.3 MPa,波数3波のパルス超音波を照射し,細胞核のPI輝度変化を超音波照射直後から40分後まで1分おきに観察した.
【結果・検討】
各条件におけるPI輝度値の時間変化をFig. 1に,損傷・修復率の比較をTable 1に示す.ゲル上細胞の近傍に非接着気泡がある場合,全ての細胞のPI輝度に変化が無かった(4/4)が,接着気泡がある場合では28%の細胞のPI輝度が漸増した.一方,カバーガラス上細胞では,PI輝度の増加はそれぞれ65%,44%であり,40分後の輝度値はゲル上細胞の3倍程度大きかった.PI輝度の持続的な増加を細胞膜修復なし,飽和傾向を修復ありと考えると,損傷後のゲル上細胞の輝度増加は僅かで,損傷した細胞全てに修復が起きているものと考えられた.In vivo条件では,接着気泡を用いることで細胞損傷を発生させ,損傷はin vitroの条件と比べると軽微で容易な修復が期待できることが示唆された.