Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

一般口演
工学基礎 生体作用

(S536)

超音波エネルギーが細菌のバイオフィルムに及ぼす影響 第2報

Effects of ultrasonic irradiation on bacterial biofilms the second report

鯉渕 晴美1, 山田 俊幸1, 藤井 康友2, 紺野 啓1, 小谷 和彦1, 山本 さやか1, 谷口 信行1

Harumi KOIBUCHI1, Toshiyuki YAMADA1, Yasutomo FUJII2, Kei KONNO1, Kazuhiko KOTANI1, Sayaka YAMAMOTO1, Nobuyuki TANIGUCHI1

1自治医科大学臨床検査医学, 2京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

1Department of Clinical Laboratory Medicine, JIchi Medical University, 2Department of Human Health Science, Kyoto University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
細菌のバイオフィルムは細菌外の多糖類や蛋白から構成されている.細菌がバイオフィルムで覆われると,細菌が感染防御機構から逃れ,静かに増殖できる状態となる.また,バイオフィルムによって抗菌薬の浸透性が低下するため,バイオフィルム感染症は抗菌薬治療に対して難治性となる.我々は第88回日本超音波医学会学術集会にて,超音波エネルギー(照射超音波強度約10W/cm2)によってバイオフィルムが減少することを報告した.今回は超音波エネルギーを更に下げて,バイオフィルムへの影響を検討したので報告する.
【方法】
6穴wellプレートの最も左上のwell(No.1 well,直径約4 cm)に,Tryptic Soy Broth(TSB)を2 ml入れ,ATCC 35984 Staphylococcus epidermidisS.epidermidis)の菌液を20μl接種した.プレートを18時間培養し,wellの底面にバイオフィルムを作成した.Well内のTSBを破棄し,生食で4回洗浄後,well内に生食を2mlいれ,プレートを超音波照射機器に設置した.照射した超音波は連続波で,照射時間は24時間,周波数は1MHzとした.Well底面の超音波強度は,5W/cm2と2.5W/cm2で検討した.
バイオフィルムを作成した別のプレートを37度のふ卵器の中に入れ,超音波非照射群とした.
24時間後,well内の生食を破棄し,生食で4回洗浄した.0.1%クリスタルバイオレットで1分間染色し,染色液を破棄した後,蒸留水で2回洗浄した.well内のクリスタルバイオレットを99.5%エタノール4mlで抽出した.抽出液を595nmで吸光度を測定し,バイオフィルムの定量値とした.
【結果】
照射超音波強度が5W/cm2では吸光度の平均(n=5)は超音波照射群,非照射群でそれぞれ,0.4196,1.9516であった.2.5 W/cm2では吸光度の平均(n=5)は照射群,非照射群でそれぞれ,0.5664,2.0722であった.5W/cm2・2.5W/cm2両者とも超音波照射群では非照射群と比較して有意に吸光度が減少した.
【考察】
照射超音波強度を5W/cm2・2.5W/cm2に低下させても,超音波照射群では非照射群と比較して抽出液の吸光度が有意に低く,超音波照射によってバイオフィルムが減少していることがわかった.超音波照射群での吸光度は,5W/cm2と2.5W/cm2では差がなく,バイオフィルムの減少量は照射超音波強度に非依存的であることが示唆された.