Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 体表臓器 奨励賞演題 体表臓器

(S528)

超音波を用いたリンパ浮腫の診断と外科治療への応用

The Diagnosis and Surgical Treatment Application of Lymphedema Using Ultrasound

林 明辰

Akitatsu HAYASHI

国保旭中央病院形成外科

Plastic and Reconstructive Surgery, Asahi General Hospital

キーワード :

【目的】
リンパ浮腫の診断や重症度評価の方法としては,リンパ管シンチグラフィーやICGリンパ管造影の有用性がこれまで報告されてきたが,侵襲性が高いことや施設が限られることが指摘される.また,保存療法に対し抵抗性のあるリンパ浮腫に対する外科治療としてリンパ管細静脈吻合術(LVA)やリンパ節移植(LNT)の有効性が報告されてきた.限られた時間の中でより効率的・効果的なLVAやリンパ節移植を行うには,術前のリンパ管同定や吻合・移植に最適なリ細静脈・リンパ管・リンパ節の選択が重要となる.現在広く使われるようになったICGリンパ管造影においては,リンパ液のDermal backflowを示す領域では病期の進行に伴いリンパ管の同定は困難となる.その場合,術者の解剖学的知識や経験などに基づき手術部位を決定することが多く,リンパ管剖出における確実性は低下する.我々は,より普及率の高く低侵襲である超音波を用い,リンパ浮腫の重症度診断と外科治療における超音波の有用性を検討した.
【方法】
診断に関しては,二次性下肢リンパ浮腫患者18名を対象に,超音波を用いたReal time Elastography(ES)とICG所見の相関性について検討した.外科治療に関しては,下肢リンパ浮腫患者28名を対象に超音波によるリンパ管同定法の感度・特異度を検証した後,下肢リンパ浮腫患者55名を対象に,術前に超音波を施行したLVAあるいはリンパ節移植の手術におけるリンパ管発見率・時間を,超音波を用いない群と比較し検討を行った.
【結果】
ESは重症度に応じてICGと相関性を認めた.超音波を用いたリンパ管同定法の感度・特異度はともに90%以上と高く,また超音波を用いない群と比較し,術中のリンパ管発見率は高くなり,発見時間は短縮した.さらにはリンパ節周囲の輸入リンパ管と輸出リンパ管の同定も可能であった.
【考察】
本研究では,施設が限定される高価な機器や造影剤などを用いずに,より普及している超音波検査装置のみを用いることで,高い精度でリンパ浮腫の重症度診断ができ,またICGリンパ管造影上リンパ液のDermal backflowを示す部位や解剖学的にリンパ管の数が少ない部位でもリンパ管の位置を把握でき,より効率的で確実なLVAやLNTを実践できることが示唆された.今後,超音波機器のさらなる機能向上に伴い,LVAやリンパ節移植における吻合部の評価なども可能になってくると予測される.