Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 産婦人科 奨励賞演題 産婦人科

(S527)

胎児先天性心疾患において羊水中NT-pro BNPは胎児心不全の重症度を反映する

Amniotic fluid natriuretic peptide levels are associated with the severity of fetal heart failure in infants with congenital heart disease

三好 剛一, 根木 玲子, 釣谷 充弘, 吉松 淳

Takekazu MIYOSHI, Reiko NEKI, Mitsuhiro TSURITANI, Jun YOSHIMATSU

国立循環器病研究センター周産期・婦人科

Perinatology and Gynecology, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【目的】
小児・成人領域ではナトリウム利尿ペプチドが心不全マーカーとして臨床応用されている.正常胎児において,羊水中のナトリウム利尿ペプチドは臍帯血中濃度と相関することが報告されている.臍帯穿刺は技術的な問題や胎児への高いリスクを伴うが,羊水のサンプリングは比較的容易かつ安全であり,羊水中のバイオマーカーは臨床応用できる可能性がある.本研究では,胎児先天性心疾患(CHD)における羊水中ナトリウム利尿ペプチドについて,超音波検査による胎児心不全との関連から検討した.
【方法】
2012年9月から2015年8月までに当センターで周産期管理を行ったCHD 100例において,分娩時に臍帯血(静脈血)及び羊水を採取し,AIA法によりTotal BNP及びNT-pro BNPを測定した.超音波検査による胎児心不全評価法としてCardiovascular profile(CVP)scoreを用い,分娩1週間以内のCVP scoreと比較検討を行った.統計解析にはt検定,Fisher正確検定を用い,p<0.05を有意差ありとした.倫理委員会の承認を得て,文書による説明同意の下で実施した.
【結果】
分娩週数は38±2週,出生体重は2,751±519gで,35例(35%)が帝王切開術であった.臍帯血中Total BNP,NT-pro BNP,羊水中Total BNP,NT-pro BNPの各中央値(最小値−最大値)は,19(0−1,277),678(140−24,921),4(0−15),46(10−156)ng/mLであった.臍帯血中と羊水中のTotal BNPの相関係数は0.13(p=0.23),臍帯血中と羊水中NT-pro BNPの相関係数は0.71(p<0.05)であった.CVP scoreと臍帯血中Total BNP,NT-pro BNP,羊水中Total BNP,NT-pro BNPとの相関係数は,0.54,0.69,0.13,0.76で,羊水中Total BNPとは相関性を認めず,羊水中NT-pro BNPとの相関性が最も強かった(p<0.01).羊水中NT-pro BNPは,出生体重,発育不全の有無,羊水量,分娩様式,陣痛の有無による差は認めず,妊娠週数とは負の相関を認めた(r=0.42,p=0.04).胎児CHDの病態別にみると,特に胎児不整脈(頻脈,徐脈)において,臍帯血中および羊水中のNT-pro BNPの上昇が顕著であった.
【考察】
胎児心不全の超音波評価法として,近年CVP scoreが注目されている.CVP scoreは腔水症,心拡大,心機能(房室弁逆流),静脈系波形異常,臍帯動脈波形異常の5項目(10点満点)からなる比較的簡便な胎児心不全評価法であるが,胎児CHDにも応用可能であり,予後を反映することが示されている.本研究では,臍帯血中および羊水中の心不全バイオマーカーとCVP scoreとを比較検討することで,臍帯血中では,Total BNP,NT-pro BNPのいずれも胎児心不全を反映することが確認された.一方,羊水中では,Total BNPは低値であり胎児心不全の評価は困難であったが,NT-pro BNPは胎児心不全の重症度と相関した.特に胎児不整脈症例における胎児心不全評価に有用と考えられた.
BNPは心筋より分泌されるホルモンであるが,BNP前駆体(pro BNP)がプロセッシングを受け,活性型BNPと非活性型のNT-pro BNPとして血中に分泌される.pro BNPも一部は血中に分泌されており,pro BNPと活性型BNPを合計したものがTotal BNPとして測定される.Total BNPはNT-pro BNPに比して安定性が低く,血中における半減期が短いことが知られている.本研究結果から,Total BNPは,羊水中では血中よりもさらに早く分解されていることが推察された.
【結論】
胎児CHDにおいて,羊水中Total BNPは極めて低値であり,胎児心不全の評価は困難であった.一方,羊水中NT-pro BNPは,臍帯血中濃度と相関し,胎児心不全の重症度を反映していた.今後,胎児心不全のバイオマーカーとしての有用性を前向き試験により検証していきたい.