Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 産婦人科 奨励賞演題 産婦人科

(S526)

下大静脈径と分娩時出血量の関連性に関する研究

Relation between bleeding and diameter of inferior vena cava at immediate postpartum period

大場 智洋, 仲村 将光, 瀧田 寛子, 新垣 達也, 長谷川 潤一, 松岡 隆, 関沢 明彦, 岡田 義之

Tomohiro OBA, Masamitsu NAKAMURA, Hiroko TAKITA, Tatsuya ARAKAKI, Junichi HASEGAWA, Ryu MATSUOKA, Akihiko SEKIZAWA, Yosiyuki OKADA

昭和大学産婦人科学講座

Obstetric and Gynecology, Showa University Hospital

キーワード :

【目的】
産科危機的出血は妊産婦死亡の主な原因の一つで,初療の段階で循環血液量の評価を行い,輸液および輸血の必要性を判断し,補充療法を行うことによって妊産婦死亡を回避することができると考えられる.しかしながら,現状では,明確な補充療法開始基準はなく,血液データやバイタルサインによって喪失した循環血液量を推測し,それらが改善した程度で補充量は決定される.より正確にかつ迅速に循環血液量を推測するために,分娩終了後の下大静脈径(IVC)を測定し,喪失した循環血液量の評価に用いることができるかどうかを本研究の目的とした.
【方法】
昭和大学病院で2015年3-11月に経腟分娩した妊娠37-41週の単胎症例を対象にprospective cohort studyを施行した.分娩1時間後に仰臥位で,経腹超音波検査によりIVCを吸気時(IVCi)と呼気時(IVCe)に測定した.下大静脈径は肝辺縁の最大径で測定し,血管壁の内側から内側を計測した.超音波検査と同時に心拍数と血圧を測定し,SIを求めた.IVC,SIと分娩時出血量との相関と1500g以上の出血をの関連性を調査した.
【結果】
対象は186例,分娩時出血量(mean±standard deviation)は584±430g,下大静脈径は吸気時(IVCi):11.3±4.1mm,呼気時(IVCe):13.0±4.3mm,であった.下大静脈径と分娩時出血量との相関係数は,IVCi: 0.327,IVCe: 0.337,SI: 0.266であった.最大尤度比から求めたカットオフ値での1500g以上の出血量を推測する精度は,IVCi≦9.3mm:感度:90.9% 陽性的中率:16.9%,IVCe≦13.0mm:感度:90.9% 陽性的中率:10.8%,SI≦0.67:感度:81.8% 陽性的中率:14.0%であり,IVCとSIによる精度は,IVCi≦9.3mmかつSI≦0.67:感度:81.8%,陽性的中率:36.0%,IVCe≦13.0mmかつSI≦0.67:感度:72.7%,陽性的中率:21.0%であった.
【考察】
下大静脈径の測定は,単独では循環血液の喪失量の評価に関して精度が低いものの,バイタルサインとの組み合わせることにより,精度が高くなることが示唆された.本研究により,産科危機的出血例における下大静脈径とShock indexを用いた循環血液の喪失量をよりよく評価することが可能となることが示された.