Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 産婦人科 奨励賞演題 産婦人科

(S525)

経腟超音波で胎盤辺縁までの最短距離が計測不可な前置胎盤は同種間輸血の独立危険因子

Placental edge undetectable by vaginal ultrasound as a risk factor for allogeneic blood transfusion in placenta previa

馬場 洋介, 高橋 宏典, 高橋 佳代, 桑田 知之, 松原 茂樹

Yosuke BABA, Hironori TAKAHASI, Kayo TAKAHASHI, Tomoyuki KUWATA, Shigeki MATSUBARA

自治医科大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Jichi Medical University

キーワード :

【目的】
前置胎盤は,「辺縁,部分,全前置胎盤」の3種類に分類される.組織学的内子宮口を覆う胎盤の辺縁から同子宮口までの最短距離が2cm以上の場合,全前置胎盤と定義される.子宮下節に付着している胎盤面積が多ければ大出血・輸血頻度は増加すると予想される.経腟超音波で最短距離が計測できない,すなわち経腟超音波画面で胎盤の辺縁が描出されず,画面全部が胎盤で占められる場合(計測不可全前置)には,下節全体が胎盤で占拠されている可能性が高く,大出血・輸血の頻度が高い印象を持ってきた.本研究では,経腟超音波で最短距離が計測可能否かで全前置胎盤を2つに分け(計測可能と計測不可全前置),出血・輸血を中心とした両者の背景と予後を調査した.
【対象】
当院で2006年4月から2015年10月までに帝王切開(帝切)した前置胎盤307例を対象として後方視的に検討した.
【方法】
解析1:計測可能全前置で,経腟超音波での内子宮口から胎盤辺縁までの最短距離と手術時出血量の相関を,Spearman順位相関係数を用いて検討.
解析2:307例を辺縁(79例),部分(72例),計測可能全前置(115例),および計測不可全前置(41例)の4群に分類して,以下の項目を比較:母体年齢,BMI,喫煙歴,飲酒歴,初産・経産,ART妊娠,帝切既往,子宮内容除去術既往,子宮筋腫,胎盤前壁付着,lacunae(サイズが1×1cm以上),警告出血,術前母体Hb,術式(帝切/予定子宮摘出),手術時出血量,transplacental approach,自己血貯血,同種間輸血,ICU入院,癒着胎盤(病理検査),分娩週数,出生体重,Apgar score(1分値,5分値),臍帯動脈血pH.予定子宮摘出とは,術前に癒着胎盤が疑れ,帝切直後に胎盤を剥離させずに子宮摘出した症例(尚,全例,病理学的に癒着胎盤であった).統計学的検定:二値変数はFisherの直接法(post-hoc検定はHolm法),連続変数はKruskal-Wallis検定(post-hoc検定はSteel-Dwass法)を用いた.
解析3:全307例を対象に,同種間輸血に対するオッズ比(OR)を,多重ロジスティック回帰分析を用いて算出.単変量解析で有意であった,初産・経産,帝切既往,胎盤前壁付着,lacunae,術式(帝切のみ/予定子宮摘出),計測不可全前置の有無を独立変数とした.さらに,手術時出血に影響しうる処置(予定子宮摘出,子宮圧迫縫合,子宮内バル-ン留置)施行例を除いた250例でも同様の解析をした.本研究は倫理委員会の承認の下で実施した.
【結果】
解析1:計測可能全前置115例において,経腟超音波での最短距離(mm)は,中央値が35,範囲は20-84.手術時出血量との相関は,r=0.19,95%信頼区間は0.014-0.368.(参考)計測不可全前置でのMRIまたは経腹超音波による内子宮口から胎盤辺縁までの最短距離(mm)は,中央値が119,範囲は90-189.
解析2:計測不可全前置群が,他の3群いずれとも有意差を認めた項目(辺縁,部分,計測可能全前置,計測不可全前置)は,帝切既往(10.1,8.3,13.9,46.3%),胎盤前壁付着(12.7,6.9,20.0,63.4%),予定子宮摘出(0,0,4.3,24.4%),手術時出血量(中央値)(1160,1330,1470,2550ml),同種間輸血(3.8,4.2,10.4,43.9%),ICU入院(1.3,1.4,3.5,26.8%),癒着胎盤(1.3,0,5.2,24.4%).
解析3:同種間輸血の独立危険因子は,予定子宮摘出(OR6.6),計測不可全前置胎盤(4.2),帝切既往(5.1),lacunae(4.0).前述の処置症例を除いた250例の解析では,計測不可全前置胎盤(5.2)のみが独立危険因子であった.
【考察】
全前置胎盤において,経腟超音波での最短距離が計測できる場合は,その距離と手術時出血量との相関は高くない.一方,最短距離が計測できない全前置胎盤は,癒着胎盤の有無に関わらず同種間輸血の可能性が高い.
【結論】
全前置胎盤の診断では,経腟超音波で胎盤辺縁までの最短距離が計測できるかどうかにも留意する必要がある.