英文誌(2004-)
奨励賞演題
奨励賞演題 消化器 奨励賞演題 消化器
(S524)
超音波検査画像を利用した肝臓実質表面の凹凸計測から見た肝実質線維化評価の研究
Study of the liver parenchyma fibrosis evaluation judging from liver surface irregularities measurement using an ultrasonography image
荒川 恭宏1, 西尾 雄司1, 竹田 欽一1, 奥藤 舞1, 室井 航一1, 後藤 秀実2, 伊藤 将倫3, 今泉 延3, 橋本 浩4, 神山 直久4
Takahiro ARAKAWA1, Yuji NISHIO1, Kinich TAKEDA1, Mai OKUTO1, Koichi MUROI1, Hidemi GOTO2, Masatsugu ITO3, Tadashi IMAIZUMI3, Hiroshi HASHIMOTO4, Naohisa KAMIYAMA4
1名鉄病院消化器内科, 2名古屋大学消化器内科, 3名鉄病院放射線科, 4GEヘルスケア・ジャパン超音波製品開発部
1Gastroenterology and Hepatology, Meitetsu Hospital, 2Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University, 3Radiology, Meitetsu Hospital, 4Department of Ultrasound Development, GE Healthcare Japan
キーワード :
【はじめに】
最近では,びまん性肝疾患の肝実質線維化の状態を把握するために,超音波検査による肝硬度の評価(Strain法,Shear Wave法など)が用いられているが,Bモード像に現れる微細な組織構造の変化も所見の一つと考える.今回びまん性肝疾患の画像検査所見が肝表面不整となることに着目し,その数値化を試みた.肝表面をトレースして凹凸の程度を数値化するソフトを試作し,超音波検査時に得られたBモード画像の処理結果と,血液生化学検査結果等を比較して肝実質線維化における相関性を検討する.
【対象】
当院倫理員会承認後から,本研究に同意が得られた患者を対象とした.内訳は,肝機能異常やウイルス性肝炎などによって消化器内科を受診し,超音波検査と血液生化学検査を同時期に行った96名である.
【使用装置・方法】
①使用装置:GE社製 LOGIQ E9(使用プローブ:9L-D).
②使用ソフト:MATLABを用いて試作した肝表面トレース及び数値化ソフト.
③対象:周波数は9.0MHz,表示Depthは5cmに固定し,Focusを肝表面付近に設定して,肝S5の肝実質表面の画像を取得.
④血液生化学検査結果(血小板,ヒアルロン酸,Ⅳ型コラーゲンなど)や臨床情報(ウイルス性肝炎や糖尿病の有無,アルコールの飲酒歴など)を診療記録等より取得.
⑤得られたDICOM画像に対し,肝表面付近にROIを設定して表面形状を自動トレース(図)し,肝表面の凹凸の程度を数値化した.本検討では,肝実質側から肝表面を探索し,凹凸度合いを移動平均との差分によって数値化している.1つの症例に対して,肝表面が明瞭に描出できた5フレームの画像を抽出して処理を行い,その中央値を結果とした.なお,明瞭に描出できなかったと判断した症例については,今回の評価対象外とした.
⑥数値化した結果と,血液生化学検査結果等を比較し肝実質線維化における相関性を検討した.
【考察】
各項目の相関係数は,血小板:r=-0.386(p<0.0005).Ⅳ型コラーゲン:r=0.35(p<0.0005).ヒアルロン酸:r=0.292(p<0.005).FIB-4 index:r=0.428(p<0.0001)であった.肝表面が明瞭に描出できなかった症例は,体表から肝実質表面までの距離が遠い患者や,腹水を有する患者などであった.
【結語】
本研究により得られた肝実質表面の凹凸の数値は,臨床結果における肝実質線維化と若干ではあるが相関していた.肝実質表面の凹凸の程度を数値化するという新たな試みは,肝線維化の予測の一助となる可能性が示唆された.