Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 消化器 奨励賞演題 消化器

(S523)

切除可能大腸癌の術前精査における,体外式超音波検査による局在診断の有用性

Effectiveness of Transabdominal Ultrasound in locating surgically resectable colorectal cancer

津田 桃子1, 西田 睦2, 3, 水島 健1, 佐藤 恵美2, 4, 工藤 悠輔2, 3, 表原 里実2, 3, 本間 重紀5, 川村 秀樹5, 加藤 元嗣1, 坂本 直哉1

Momoko TSUDA1, Mutsumi NISHIDA2, 3, Takeshi MIZUSHIMA1, Megumi SATOH2, 4, Yusuke KUDO2, 3, Satomi OMOTEHARA2, 3, Shigenori HOMMA5, Hideki KAWAMURA5, Mototsugu KATO1, Naoya SAKAMOTO1

1北海道大学大学院医学研究科消化器内科学, 2北海道大学病院超音波センター, 3北海道大学病院検査・輸血部, 4北海道大学病院放射線部, 5北海道大学大学院医学研究科消化器外科学分野Ⅰ

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Hokkaido University Graduate School of Medicine, 2Diagnostic Center for Sonography, Hokkaido University Hospital, 3Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital, 4Division of Radiology, Hokkaido University Hospital, 5Department of Gastroenterological SurgeryⅠ, Hokkaido University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景・目的】
大腸癌の外科治療において原発巣の局在部位を明確にすることは,切除腸管・郭清リンパ節範囲を決定するうえでの必須事項である.局在診断は,下部消化管内視鏡検査(CS)およびCT検査(CT)にて行われることが多い.しかし,CSでは大腸管腔は各部位での特徴的所見に乏しいことも多く,正確な局在診断が難しい場合も経験する.また,CTでは病変自体を指摘できないことも少なくない.一方で体外式超音波検査(US)による局在診断能については明らかにされていない.今回,USの大腸癌局在診断ツールとしての有用性を,標準的ツールとして用いられるCSおよびCTとの比較から検討した.
【対象】
2011年2月から2015年10月の期間で,術前にCS,造影CT,US全てを施行した大腸癌切除症例172例,177病変.男性112例,女性66例.年齢は66±11歳(平均±SD)を後方視的に検討した.
【方法】
US装置は東芝Aplio XG/ 500,使用プローブは中心周波数帯3.75MHz/6MHzコンベックス型,7.5MHzリニア型を用いた.腫瘍局在部位は大腸癌取扱い規約第8版に基づき決定.原発巣診断は,CSでは術者の判断で,CTでは放射線科診断医の読影レポートを参照,USでは系統的走査で大腸を追跡し,内腔面の不整な限局性壁肥厚像が存在する大腸の走行形態,部位から位置を同定した.局在部位の確定は外科手術所見をもって判定.統計学的一致度の指標としてカッパー係数を用いた.
【結果】
172症例177病変の内訳は,早期癌37病変,進行癌140病変.同定可能病変はCS:97.2%(172/177病変),CT:79.7%(141/177病変),US:95.5%(169/177病変)であった.外科手術所見による最終局在診断と各画像診断とのカッパー値はCS:0.87(P<0.001),CT:0.65(P<0.001),US:0.87(P<0.001).各検査で指摘し得なかった病変は,CS:2例(進行癌口側病変),CT:深達度sm以浅の早期癌21/36病変(58.3%),部位では上行結腸9/36病変(25.0%),S状結腸8/36病変(22.2%).US:上行結腸2病変とS状結腸3病変(平坦な早期癌),直腸3病変(深達度smが2病変,mpが1病変).
【考察】
CSとUSの腫瘍局在診断能は同程度に高かった.CTでは小病変の同定が困難なため,一致率が低かったと考えられた.USはCSと比較し,系統学的走査により解剖学的に局在部位を同定可能である点が局在診断能の高さに寄与したと考えられた.一方で,厚みの薄い平坦病変やハウストラが深い上行結腸での早期癌は同定困難であった.S状結腸は腸管の長さや走行には個人差があり,しばしば全体の走行を追跡することが困難なため,小病変が見逃されたと考えられた.また直腸病変は体表から深部に位置し,感度不足により描出不良で評価困難であった.しかしながら,CSで観察困難であった進行癌口側の腫瘍2例(1例はCTにて同定困難)の観察が行えたことは,深部挿入困難例におけるUSの有用性が示唆された.
【結語】
体表から深部に位置する病変の評価における限界はあるが,USはCTで同定が困難な早期癌においても,CSと同等の局在診断能をもつ有用なツールといえる.