Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 消化器 奨励賞演題 消化器

(S523)

C型慢性肝炎患者におけるVTQによる線維化診断に影響する因子の検討

Factors influencing the diagnostic accuracy of VTQ in patients with chronic hepatitis C

小島 優子1, 舘 佳彦1, 平井 孝典1, 宮田 章弘1, 小原 圭1, 灰本 耕基1, 佐藤 亜矢子1, 石田 哲也1, 永井 真太郎1, 磯部 和男2

Yuko KOJIMA1, Yoshihiko TACHI1, Takanori HIRAI1, Akihiro MIYATA1, Kei OHARA1, Kouki HAIMOTO1, Ayako SATO1, Tetsuya ISHIDA1, Shintaro NAGAI1, Kazuo ISOBE2

1小牧市民病院消化器科, 2近藤医院内科

1Gastroenterology, Komaki City Hospital, 2Gastoroenterology, Kondo Clinic

キーワード :

【目的】
慢性肝疾患における線維化stage(以下FS)は疾患の予後予測や治療法の選択において重要な判断因子である.Virtual touch quantification(以下VTQ)にて組織のせん断弾性波を測定するVs値(m/sec)は,FSを定量的・客観的に判断し繰り返し施行可能な非侵襲的肝線維化診断法の1つとして報告されている.しかし実際には組織学的診断とVs値が解離する症例が存在しそれに影響する因子について検討することを目的とした.
【方法】
当院にて2013年11月から2015年9月において,肝生検とVTQが同日施行されたC型慢性肝炎の患者199人において,肝生検によるFSがほぼ均等になるように2群に分け,前期の群をTrainig set,後期の群をValidation setと設定した.Training setにおいてVTQのFS診断能をROC曲線を用いて評価し,Validation setにおいて組織学的FSとVs値が解離する症例について交差検証を行った.なおVTQはSIEMENS社ACUSON S2000を使用し,安定した10回のVsの中央値を測定値とした.
【結果】
組織学的FSの分布は,trainig set(人)/ validation set(人)において,F0-1;38/37,F2;22/23,F3;17/17,F4;22/23とし,training setとしての99症例においてVTQによる各線維化診断をROC曲線を用いて検討したところ,cut off値/AUROC/感度/1-特異度はそれぞれ,①F2;1.26/0.899/0.918/0.289②F3;1.50/0.884/0.923/0.217 ③F4;1.79/0.906/0.818/0.104 であった.Validation setとして100症例において,上記cut off値からF0-1<1.23,1.23≦F2<1.50,1.50≦F3<1.79,1.79≦F4として線維化判断すると,Vs値による各FSの症例(人)はF0-1/F2/F3/F4=24/26/21/29と分類された.実際の肝生検によるFSと合致した症例(正診群)は48例(48%),1stage解離した症例は42例(42%),2stage解離した症例は10例(10%)であった.そのうち,実際よりVs値が高値で解離した症例(Vs高値解離群)は37例,低値で解離した症例(Vs低値解離群)は15例であった.解離群において,年齢,BMI,WBC,Hb,Plt,ALT,AST,T-Bil,Alb,γGTP,AFP,FIB4index,APRIについて単変量解析を行ったところ,Vs高値解離群において,BMIのみが有意な因子であった.そこでBMIについて検討すると,正診群:BMI 23.7±3.1,Vs高値解離群:BMI 21.7±3.1であり,Vs高値解離群で有意にBMIが低値であった(p=0.006).しかしながら低値解離群:BMI 23.4±2.7で有意差は認めなかった.BMIのcut off値を20.9に設定した際に,Vs高値群の割合は,BMI<20.9(BMI低値群27例):BMI≧20.9(BMI非低値群73例)=63%:27%と,BMI低値群において有意にVs高値解離群の割合が多く(p=0.001),FSを高めに診断してしまう結果であった.
【結論】
VTQは肝線維化を非侵襲的に診断可能であるが,BMIが低値である症例はVs値が高値に解離する傾向にあり特にBMI<20.9においては有意にFSを高く評価してしまうといえ解釈に留意が必要と思われた.