Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 循環器 奨励賞演題 循環器

(S522)

Muller手技負荷心エコー:拡張型心筋症における運動耐容能の評価の試み

Muller Maneuver Stress Echocardiography: Evaluation of Exercise Capacity in Patients with Dilated Cardiomyopathy

尾上 武志1, 福田 祥大1, 林 篤志1, 屏 壮史1, 角 裕一郎1, 永田 泰史1, 岩瀧 麻衣1, 大谷 恭子2, 竹内 正明2, 尾辻 豊1

Takeshi ONOUE1, Syota FUKUDA1, Atsushi HAYASHI1, Soushi HEI1, Yuichirou KADO1, Yasufumi NAGATA1, Mai IWATAKI1, Kyoko OTANI2, Masaaki TAKEUCHI2, Yutaka OTSUJI1

1産業医科大学第二内科学, 2産業医科大学臨床検査部

1Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health, School of Medicine, Kitakyushu, 2Department of Laboratory and Transfusion Medicine,, University of Occupational and Environmental Health, School of Medicine, Kitakyushu

キーワード :

【背景・目的】
様々な心疾患における運動負荷心エコーの有用性は明らかであるが,十分に臨床活用されているとは言えない.より簡便かつ非侵襲的な負荷エコー法の確立が必要とされている.Muller手技は左室胸腔内圧を陰圧にする生理的な手技であり,手技により増加した左室内外圧較差(TMP)は左室後負荷上昇として作用する.後負荷の上昇による左室収縮末期容積(LVESV)の増加は,左室収縮エラスタンスと比例するため(図左),我々は拡張型心筋症(DCM)を対象としてMuller手技によって変化するLVESVの程度と運動耐容能が相関するか否かを検討した.
【方法】
DCM17例(56±14歳,男性13名)を対象として心肺運動負荷試験(CPX)と心エコー検査を施行した.冠疾患や危険因子を有さない健常者8例を対象群とした.口腔内圧が−20〜40mmHgの陰圧となるようMuller手技を3〜5回繰り返した.手技中の血圧を非観血的に連続測定し(Finapres),収縮期血圧と口腔内圧の和をTMPとした.心エコー検査はPhilips社製iE-33の同時2断面法を用いた.同時に左室心尖2腔像と心尖4腔像を描出し,LVESVを算出した.それぞれの症例において,TMPとLVESVをプロットしその傾きを算出した(図右).
【結果】
DCM群と対象群ともにMuller手技により血圧は両群間で同程度に低下した(-4.3±5.4 mmHg vs. -6.67±6.17 mmHg,p=0.3).両群ともMuller手技によりLVESVは有意に増加したが,その程度はDCM群でより大きかった(8.7±4.3 ml/m2 vs. 3.3±1.6 ml/m2,p=0.001).TMP・LVESV直線の傾きは,DCM群でより低値であり(3.7±1.2 vs. 8.1±2.0,p<0.001),CPXから求めたpeak VO2と有意に相関した(r=0.74,p<0.001).Muller手技の前後でいかなる副作用を認めなかった.
【考察・結論】
Muller手技は古典的な手技であり閉塞性睡眠時無呼吸症候群の病態解明に活用されてきた.本研究はMuller手技を用いた負荷心エコーが左室収縮エラスタンスを評価し得ることを活用した初めての研究である.本方法は安全かつ非侵襲的であり,DCMにおける運動耐容能の評価に有用であった.