Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

奨励賞演題
奨励賞演題 基礎 奨励賞演題 基礎

(S519)

Vector Flow Mappingを用いた左室内相対圧可視化法のin vitro検証

in vitro validation for Intra-Ventricular Relative Pressure Imaging using Vector Flow Mapping

田中 智彦1, 浅見 玲衣1, 川畑 健一1, 西山 知秀2, 坂下 肇2, 岡田 孝2

Tomohiko TANAKA1, Rei ASAMI1, Ken-ichi KAWABATA1, Tomohide NISHIYAMA2, Hajime SAKASHITA2, Takashi OKADA2

1株式会社日立製作所研究開発グループヘルスケアイノベーションセンタ, 2株式会社日立製作所ヘルスケア社

1Center for Technology Innovation - Healthcare, Research & Development Group, Hitachi Ltd., 2Healthcare Company, Hitachi Ltd.

キーワード :

【背景】
心臓内の相対的な圧力分布は心機能と密接に関連しているため,拡張能不全などの心不全診断への臨床応用が期待されている.拡張不全ではサクション(心尖部からの心筋弛緩による左室内の減圧現象)が障害されることが知られており,空間的な相対圧分布を計測しサクションを評価することの臨床的意義は大きい.これまでに,相対圧分布を算出する手法は幾つか提案されているものの,定量的な検証を行った研究はない.
【目的】
本研究の目的は,心臓内の相対圧分布を算出する相対圧可視化法(Relative Pressure Imaging, RPI)を提案し,検証することである.
【方法】
RPIでは,Vector Flow Mapping(VFM)により計測した2次元的な血流速度ベクトルに対し,流体の運動量保存則(Navier-Stokes方程式,NSE)を適用することで相対圧分布を算出する.なお,相対圧分布算出の計算処理負荷軽減のため,NSEに対して発散処理を施したポアソン型の方程式を用いている.
検証実験では,著者らのグループで構築した心臓左室ファントム実験系(図(a))を用い,ファントム内の拍動流(心拍数60bpm)に対してVFM計測(日立アロカメディカル株式会社社製ProSoundα10)を実施後,相対圧算出を行った.相対圧の基準点は左室内の任意位置に設定した.算出結果の比較対象として2つの圧センサが付いたカテーテル(Mikro-Tip Pressure Catheter, SPR-956S, Millar Instruments,センサ間5cm)をファントム内の心基部,中央部にそれぞれ留置し,二点間の相対圧を計測し,RPIを評価した.
【結果と考察】
図(b)に,RPIを用いて拡張期における相対圧分布を算出した結果を示す.急速流入を伴った心基部から心尖部への減圧が2次元画像として可視化されていることがわかる.また,RPIによる相対圧計測値はカテーテルによる計測値よりも35%程度過小評価しているものの,RPIがサクション動態を可視化できることが実証された.本検証を基に今後の臨床応用が期待される.なお,上述の計測値の過小評価を含め,現時点ではVFM計測の時間分解能による制約下にある.今後,高速撮像方式との組み合わせによりさらなる精度向上が期待される.