Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

Keynote Lecture
Keynote Lecture 7 産婦人科 Keynote Lecture 7 産婦人科

(S512)

産婦人科の超音波医学は臨床研究の宝庫

Clinical research of the ultrasonography in OBGY

長谷川 潤一

Junichi HASEGAWA

聖マリアンナ医科大学産婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

研究の善し悪しは,「ネタ」と「仮説」でおおかた決まる.この二つをいかに面白くするかどうかが,同じ努力をしても報われるかそうでないかの分かれ目になる.産婦人科医にとって超音波はいつも身近にあって,発表しようとするネタには困らないかもしれない.しかし,ネタは臨床的に意義の大きいものを考えなければならない.とにかく臨床的意義(インパクト)と,ひとと違うこと(オリジナリティ)を探すことに時間をかけなければならない.
また,仮説のない研究はいまいちな成果にしかならない.逆に言えば,しっかりした仮説があれば,結果を心配しなくて良いのである.臨床研究には,どうしても基礎的に,科学的に説明できないlimitationが存在する.屁理屈も理屈であり,たとえ屁理屈であったとしても,面白い仮説をたてることが重要である.屁理屈でも,それが証明できたときは大きな成果となるかもしれない.
教科書に書いてあること,ガイドラインの推奨A,RCTが行われたものと同じようなことをやろうとしてはいけない.みんなが知っていることが,仮説の結論になっては面白い研究にはなりえないのである.でた結果がみんなの知っていることになっては良いが,研究を始めるときの予想される結果がみんなの知っていることではいけないのである.
「ネタ」と「仮説」が決まったら,次は,それを証明するためにはどうするのが良いかを考える.方法論であり,前方視か後方視的にやるのか,cross-sectionalなのかcase-controlなのかを考える.産婦人科の超音波医学では,いろいろな手法が使えるので研究はしやすいと思われる.
データを解析する前に必ずやっておく大事なことがある.仮説から導かれる結果をあらかじめ想定しておくことである.それと同時に結果が出なかった時の考察も考えておく.仮説をあとで変えてはならないし,先に統計計算をしてもいけない.結果は,どっちに転んでも素直に受け止められるような準備をしておくのである.そうすれば,結果がどっちに転んでも,p値にこだわらず,素直に結果・考察が導かれるはずである.
本講演では,わたくしの今まで超音波を用いてやってきた臨床研究,学会発表のエッセンスを論じる.ネタ探しの基本は,興味のあるテーマのレビューを読む,レビューをするなどが王道であり,これは基礎でも臨床でも同じことである.しかし,臨床ならではの,悔しい症例,日常の疑問などをインパクトのある研究にもっていくコツがある.
産婦人科医にとっていつも傍らにある超音波機器は,身近な検査機器であるだけでなく,気軽に利用できる研究のひとつのツールであると思う.妊娠中の超音波検査は出生前診断のひとつであるという位置づけに気を付ける必要はあるが,通常の使用範囲内であれば非侵襲的に多くの情報を得ることができる.産科のアウトカムは長くとも10ヶ月で得られる.なにか新しい発見をすれば,その結果が明日の臨床にすぐ役立ち,多くの人が救われるかもしれない.どんな症例が,いつどんな転帰になるかは分からない.いつも,きれいな画像,データを残す癖をつける.なにか重大イベントが発生したときほど証拠を残す.
経験が浅くても,そういった視点で産婦人科の超音波検査を施行し,地道にデータを収集すれば,きっと役立つ何かを見つけることができる.臨床が好きな人ほど,臨床研究はうまくいく.地道にいつも超音波をいじっていれば,斬新なネタも思いつくものである.また,それを自分だけで思っていないで,学会発表・論文執筆によってそれを世間に知らしめることは,自分の世界を広げてくれる.これらがうまくいったら産婦人科はもっと楽しいはずである.