Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 頭頸部
パネルディスカッション 頭頸部(JSUM・JABTS共同企画) 頭頸部領域インターベンションの現況と今後

(S504)

頭頸部嚢胞病変に対する経皮的エタノール注入療法の現状と展望

The role of percutaneous ethanol injection therapy for cystic lesions in head and neck : current situations and prospects

堂西 亮平, 福原 隆宏, 松田 枝里子

Ryohei DONISHI, Takahiro FUKUHARA, Eriko MATSUDA

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Tottori University

キーワード :

現在,頭頸部嚢胞病変に対する治療法は,本邦では甲状腺嚢胞とリンパ管腫を除いては手術しか認可されていない.しかし,経皮的エタノール注入療法(PEIT)をはじめとする局所注入療法は,手術と比較し侵襲が少ない,入院が不要である,低コストといった利点があり,以前より頭頸部嚢胞病変への使用が試みられている.局所注入療法は1939年にFishらの腎嚢胞に対して50%dextroseを注入したとする報告が最初であり,頭頚部嚢胞病変では1983年にTreeceらが甲状腺嚢胞に対して初めてテトラサイクリンの注入を行った.本邦では1995年にリンパ管腫に対するOK-432(ピシバニール)注入療法が,2002年には甲状腺嚢胞,機能性甲状腺結節,2次性副甲状腺機能亢進症等に対するPEITがそれぞれ認可されている.OK-432はA群溶血性連鎖球菌の弱毒株の一種であるStreptococcus Pyogenesのペニシリン処理凍結乾燥粉末である.その正確な機序は解明されていないが,局所的な炎症を引き起こし,マクロファージの誘導やサイトカインの産生を促すことで嚢胞を縮小させると言われている.一方でエタノールは化学的に内皮細胞障害や硬化性変化,血管塞栓形成を引き起こすことで縮小効果をもたらすとされている.甲状腺嚢胞以外の頭頸部嚢胞病変についての報告では,その副作用の少なさからOK-432が好んで用いられる傾向にあるが,作用機序を考慮すると,組織障害性という点でエタノールはOK-432に比較して強い凝固作用を有すると考えられる.実際にリンパ管腫,側頸嚢胞,正中頸嚢胞で良好な結果が報告されており,当科ではPEITを主体とした加療を行っている.PEITに際してはまず穿刺吸引細胞診(FNA)を行い,悪性疾患を否定する.FNAの際に内容液は可及的に吸引するが,再検して再貯留が認められた場合に,手術や経過観察などの方針を含めた十分なインフォームドコンセントを行い,同意を得てPEITを施行している.エコーガイド下に21G針を刺入し,先端が嚢胞内腔に存在することを確認し,内容液を吸入する.針は刺入した状態でシリンジを交換して無水エタノールを注入,少し時間をおいてからエタノールを吸引・除去する.除圧のために針を残してシリンジを取り外し,数分おいてから針を抜去する.注入量に関しては甲状腺嚢胞を除く頭頸部嚢胞病変では被膜を有する疾患が多いため,甲状腺嚢胞とは異なり2mLを超えても問題はないと考え,内容液量に応じてその量を決定している.当科では2008年4月1日から2015年12月1日までの間に甲状腺嚢胞を含めた頭頸部嚢胞病変32例に対してPEITを施行している.中には他院でリンパ管腫に対してOK-432を繰り返していたが改善しないまま経過観察となっていたが,当科でPEITを施行することで良好な縮小効果を得た症例も存在した.一方でエタノールは嚢胞外に漏出した場合に強い組織障害を引き起こす.側頸嚢胞に対してPEITを行った際にエタノールが病変外に流出し,副神経麻痺を来した症例も報告されている.しかし,近年では超音波検査機器の改良に伴い,針先の確認だけでなく,注入されたエタノールや組織の継時的変化までもが描出できるようになり,合併症のリスクは大きく減っている.つまり,PEITは簡便で,効果的で,安全なツールとなっており,年齢や審美面で手術を迷うような症例に対する有力な選択肢の一つとなっていくと期待される.今回,頭頸部嚢胞病変に対するPEITについて,文献的考察と実症例を踏まえて現状と展望を述べる.