Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 頭頸部
パネルディスカッション 頭頸部(JSUM・JABTS共同企画) 頭頸部領域インターベンションの現況と今後

(S503)

唾液腺腫瘍における超音波ガイド下非吸引細胞診の有用性

Diagnostic accuracy of ultrasonography-guided nonaspiration cytology(NAC)of salivary gland neoplasms

平松 真理子1, 小出 悠介2, 西尾 直樹1, 藤本 保志1, 森 瑤子1, 曾根 三千彦1

Mariko HIRAMATSU1, Yusuke KOIDE2, Naoki NISHIO1, Yasushi FUJIMOTO1, Yoko MORI1, Michihiko SONE1

1名古屋大学医学部医学系研究科耳鼻咽喉科, 2愛知県がんセンター頭頸部外科

1Otorhinolaryngology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Head and Neck Surgery, Aichi Cancer Center Hospital

キーワード :

【目的】
唾液腺腫瘍については手術の要否,悪性が予測される場合の顔面神経の扱いなど手術計画に大きく影響するため,術前診断が非常に重要である.これまで我々は診断精度を高めるために非吸引穿刺細胞診(non-aspiration cytology以下NAC)を超音波ガイド下で行っており,甲状腺腫瘍,リンパ節においての有用性を報告してきた(2006).今回は唾液腺腫瘍における超音波ガイド下NAC検体の評価と診断率を検討した.
【対象】
2005年4月から2016年1月に名古屋大学附属病院を受診し,術前に超音波ガイド下NACを施行し,その後手術にて病理組織診断が確定した大唾液腺腫瘍286症例(耳下腺腫瘍252例,顎下腺腫瘍34例)を対象とした.
【方法】
すべての症例は検査について十分な説明を受け,同意の上で検査を行った.超音波機種はSSD-2000,Multi View(ALOCA)接触子6-13MHzのリニア(LA39),EUB-7500(HITACHI)接触子6-14 MHzのリニア(EUP-L65)を使用した.穿刺はフリーハンドでおこない,24ゲージ針を使用した.検体は,乾燥固定標本と,95%エタノール固定標本を作製した.パパニコロウ染色に加えて,迅速ギムザ染色を行い,その場で細胞採取の状況を確認し,不十分と判断された場合には再度穿刺を行っている.細胞診の報告様式は,「唾液腺における穿刺吸引細胞診の新報告様式」(2004)に従い診断した.
【結果】
組織診断結果は良性腫瘍236例82.5%(耳下腺211例82.9%,顎下腺25例73.5%),悪性腫瘍50例(耳下腺41例17.1%,顎下腺9例26.5%)であった.NACの検体不適正率は2.8%(耳下腺8例3.2%,顎下腺0例0%)であった.検体不適正の8例を除いた278例についてNACと病理組織診断の結果を比較すると,良悪性の診断は278例中245例一致し,正診率は,88.1%(耳下腺87.3%,顎下腺94.1%)であった.特異度は92.5%(耳下腺92.1%,顎下腺96.0%),感度は68.0%(耳下腺63.4%,顎下腺88.9%),陰性的中率92.6%(耳下腺92.6%,顎下腺96.0%),陽性的中率66.7%(耳下腺61.9%,顎下腺88.9%)であった.
【考察】
検体不適正に関しては,推奨されている10%以下よりはるかに少なかった.超音波ガイド下の病変への確実な穿刺と迅速染色による細胞採取の確認を行うことにより検体の質を向上できたと考える.正診度,特異度,感度に関しては吸引細胞診(FNA)の諸家の報告と同様であった.一方,悪性腫瘍と確定診断されたが,NACにて陰性もしくは,判定不能となったものが16例あった.内訳は悪性リンパ腫が3例と最も多く,次いで,acinic cell carcinoma,adenoid cystic carcinoma,low-grade mucoepithelial carcinomaがそれぞれ2例,angiosarcoma, SCC, carcinoma arising in pleomorphic adenoma, sarcoma, salivary duct carcinomaであった.悪性リンパ腫においては60.0%(3/5例)が偽陰性であり,悪性リンパ腫の診断においては細胞診では不十分であり,病理組織検査,免疫染色が不可欠であることが示唆された.
【結論】
NACはFNA同様唾液腺腫瘍においても有効な診断法であり,超音波ガイド下穿刺と迅速染色を行うことで検体不適正率を軽減できる.