Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 頭頸部
シンポジウム 頭頸部(JSUM・JABTS共同企画) 頭頸部癌頸部リンパ節転移の超音波診断

(S501)

造影超音波による頭頸部癌リンパ節転移診断

Diagnostic value of contrast-enhanced ultrasonography for metastatic lymph nodes of head and neck cancer

志賀 清人

Kiyoto SHIGA

岩手医科大学頭頸部外科

Department of Head & Neck Surgery, Iwate Medical University

キーワード :

これまでの研究で転移リンパ節には腫瘍の形成と同時あるいは先行して栄養血管となる毛細血管網が新生することが明らかとなっている.これを利用してリンパ節の血管網を検出することによりリンパ節転移の早期診断が可能となると考えられる.リンパ節内の血流を検出する方法としては超音波装置を用いたカラードップラー法などが知られているが,より詳細な血管の分布や密度を検出する方法として,我々は造影超音波検査の頭頸部癌頸部転移リンパ節への応用を検討してきた.
造影剤を用いた画像診断はCT,MRIなどで用いられているが,CTは放射線被曝があり,ヨードやGdには腎機能障害のある症例には使えない,重篤な副作用があるなどの欠点がある.また,装置自体が大きく,高額であることも不利である.これに対し造影超音波で使用されるマイクロバブル造影剤は副作用がほとんどなく,超音波装置自体が移動可能で検査の場所を選ばないなどの長所がある.また,これまでの検討でマイクロバブル造影剤は他の造影剤に比べて造影効果が長く続くことがわかっており,表在性リンパ節のスキャンも可能である.しかし,頭頸部の解剖学的・生理学的な特徴からいくつかの問題点がある.それはリンパ節の近傍に総頸動脈,外頸動脈,内頸動脈,内頸静脈やその分枝などの血管が豊富で拍動などの影響を受けること,患者の呼吸や嚥下による動揺があること,これまで使われてきた肝腫瘍の診断ではlate phaseを使っているが,頭頸部のリンパ節ではacute phaseで見る必要があること,以上から既存の超音波診断装置の造影モードと解析ソフトでは対応ができていないことなどが挙げられる.しかし,逆に言えば頭頸部でうまく解析できる超音波診断装置・解析ソフトがあれば,全身臓器に適応できる可能性がある.
我々は東北大学医工学研究科,情報科学研究科との共同研究で頭頸部癌リンパ節転移内の毛細血管を造影超音波による動画画像から抽出する新たなアルゴリズムを作成し,画像解析ソフトとして完成させた.このソフトを用いることにより,リンパ節内の毛細血管の分布や密度を検出することが可能となった.これまで,造影超音波とこの画像解析ソフトを用いて頭頸部癌の転移リンパ節について手術症例については病理像との比較,化学放射線療法症例については治療前後のリンパ節内の構造変化などについて検討を行ってきた.
症例数はまだ十分ではないが,これまでの解析結果からこれまで不明であったいくつかの所見が明らかとなってきた.頭頸部扁平上皮癌のリンパ節転移の病理像は,まだ確定された分類はないが,造影超音波の解析画像にはいくつかのパターン(diffuse type, scattered type, perfusion defect typeなど)があり,それぞれ癌の浸潤様式と密接な関連があることがわかってきた.また,転移リンパ節の初期段階では腫瘍による血管新生が起こるが,化学放射線治療中,治療後の造影超音波画像ではリンパ節体積の縮小に伴い血管の密度はむしろ増大しており,癌細胞が死滅しても周囲の間質の血管網は残存していく様子を経時的に明らかにできた.今後は造影超音波で頭頸部癌の頸部リンパ節転移の早期診断が可能かどうかを検討していく予定である.