Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 運動器
パネルディスカッション 運動器(一部英語) 知っとく(得)! 救急現場における運動器超音波

(S493)

わかる!できる!腱の超音波検査 腱の何を,どうみるか?

Sonographic Imaging Technique in Tendon Injuries

鈴江 直人

Naoto SUZUE

徳島大学病院整形外科

Department of Orthopedics, Tokushima University Hospital

キーワード :

【はじめに】
一般に“腱”とは骨と筋肉を連結するものであり,組織学的にみれば膠原線維が同一方向に規則的に配列した構造をとっている.筋収縮による力を骨に伝えて関節を動かす,運動器にとっては非常に重要な組織である.言い換えれば身体が動いている場合,必ずいずれかの腱が何らかのかたちで働いている.それ故,身体活動においては負荷がかかりやすく,ケガ・障害の原因となることが多いため,腱の超音波検査に習熟することは非常に重要である.
【正常の腱の観察】
長軸像では線状高エコーが層状配列として観察され,fibrillar patternと呼ばれる.短軸像では点状の高エコー像が腱内に群生して観察される.またアキレス腱や膝蓋腱では周囲を覆うパラテノンと呼ばれる疎性結合組織が高エコーにみられ,関節周囲では薄い低エコーの腱鞘が観察される.
【外来で多い傷害】
救急外来で遭遇する機会が多いのは腱断裂である.アキレス腱は中高年がスポーツ活動中に断裂することが多く,診断は受傷状況や理学所見から比較的容易であるが,断端様式の評価においては超音波が有用である.足関節を他動的に底背屈させることで断端の動きを観察し,部分断裂か完全断裂か,保存療法が可能か手術適応か,といった判断が可能となる.また手指の腱断裂も切創や挫創に合併することが多く,診断そのものは創部の観察や手指の動きから可能なことが多いが,断端の位置の評価において超音波は有用である.
一方,足関節捻挫で受診した際に,靱帯損傷の有無に注目してしまい,合併する腓骨筋腱脱臼を見落とすことがある.受傷直後は自動運動での脱臼誘発が痛みのために困難であることが多いため,他動的に脱臼や亜脱臼を評価する必要がある.
一般外来では腱の炎症や変性による症状で受診する患者を多く経験する.スポーツでの障害の1つとして,アキレス腱炎やアキレス腱付着部症がある.炎症を起こしている部位は腱そのものが肥厚し,fibrillar patternの消失が観察される.また周囲の脂肪体からの血流の増加もみられる.膝蓋腱炎や膝蓋腱付着部症(ジャンパー膝)もスポーツ障害として多い.アキレス腱と動揺,肥厚やfibrillar patternの消失,疼痛部位での血流増加が観察される.アキレス腱,膝蓋腱とも周囲の滑液包に水腫を認めることもある.
また肩の腱板損傷にも注目したい.腱板は名の通り層状の腱組織であるが.中高年以上では高率に変性や断裂がみられる.また野球などのスポーツ活動でも傷めることが多い.断裂が存在する場合,断裂部位が関節側なのか肩峰下滑液包側なのか,どの範囲での断裂なのかの評価に超音波は非常に有用である.