Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
ワークショップ 血管 2 大動脈疾患に血管エコーはどこまで有用か

(S484)

末梢血管外科における大動脈疾患に対する血管エコーの有用性

Usefulness of sonography for aortic disease in vascular surgical field

宮井 美恵子

Mieko MIYAI

東京医科歯科大学末梢血管外科バスキュラーラボ

Vascular Laboratory, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

大動脈疾患を評価するモダリティは様々なものがあるが,超音波検査は患者にとって簡便かつ侵襲が少ない検査である.超音波検査が大動脈疾患の評価においてどのような点で診療上寄与しているのか,またどのような場合には他のモダリティで評価した方が良いのかを末梢血管外科の診療から現状を述べたい.
当ラボは末梢血管外科に附属する検査室であり,当科の医師を通した外来,入院の患者(救急は含まない)のみを対象として検査を施行している.2013年1月〜2015年4月までの間に661例“腹部の血管エコー”として依頼があり腹部大動脈エコー457例(69.1%)腹部内臓動脈血管エコー204例(30.9%)であった.
腹部大動脈エコーの内訳は,腹部大動脈瘤(AAA: Abdominal aortic aneurysm)・腹部大動脈解離評価,フォローアップ109例(23.9%),EVAR(:Endovascular aortic repair)後フォローアップ132例(28.9%),AAA開腹手術後フォローアップ99例(21.7%),大動脈腸骨動脈閉塞性疾患(AIOD: Aorto-Iliac occlusive disease)40例(8.8%),腸骨領域評価67例(14.7%),その他10例(2.0%)であった.症例の母数に依存するため,どの項目に対し最も超音波検査が寄与しているかは述べられないが,症例が多いこともありAAA評価として治療前後ともに超音波検査が診療上多く使用されていることがわかる.
そこでAAAの各項目評価において当科医師が超音波検査で評価に期待する点についてもまとめてみた.AAAスクリーニング・治療前評価の有用な点として,瘤壁の形態観察が行え,嚢状瘤だった場合にはPAU(:Penetrating atherosclerotic ulcer)か否かの評価ができること,瘤内もしくはその近傍の大動脈壁在血栓の評価が詳細に行えること,腎動脈と瘤との位置関係の評価が行えること,瘤よりも末梢側の血流が評価できることが挙げられる.ただし,EVAR術前の評価としては全体像の把握と客観的な血管走行の角度など計測評価が必要なため,超音波検査では不十分であり他の形態評価が必要である.AAA治療後の評価としては,人工血管置換術後の場合,中枢側大動脈の拡張の有無,吻合部仮性瘤の有無,吻合部のプラーク増加,狭窄の評価,人工血管屈曲の有無,末梢側の血流評価が重要なポイントである.EVAR術後の場合,瘤径の評価やエンドリークの有無は他のモダリティでも評価できるが,エンドリークtypeの同定,エンドリークがある場合瘤内の血流の方向性までが確認できる点が超音波検査の特性である.
またAAA症例を含め血管疾患では腎機能障害合併症例の頻度も高く,術前後評価において腎機能の保護が必要であることと,術後継続してフォローしていくことでCTなどによる被爆が多くなりすぎることも懸念される.この点からも腹部大動脈疾患評価において超音波検査は非常に有用な検査法である.