Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管 2 血管エコーにおける指導育成

(S472)

血管エコー指導医は必要か?指導医の在否を経験して

To experience the presence or absence of the teaching doctor of vascular ultrasound

高坂 仁美

Hitomi KOSAKA

神戸大学医学部附属病院検査部

Department of Clinical Laboratory, Kobe University Hospital

キーワード :

【はじめに】
血管エコーは,技師が中心に行っている検査といえる.腹部エコーや心エコーと違い,血管エコーを実際に行っている医師は少なく,当然指導医も少ないのが現状である.当院では血管エコー指導医が3年前まで在籍していたが,他施設に異動したことから現在指導医が不在の状態となっている.今回,指導医の在否を経験したことで得られた教訓について発表する.
<指導医が在籍していること>
技術的指導の他に,臨床と結びつけた専門的知識,治療を考えた検査方法の助言を得ることが可能である.早期に疑問が解決でき,症例の重要性の判断,緊急時などの対応も迅速に行うことができる.指導医は臨床医とのパイプ役となり,血管疾患に詳しくない医師への指導や交渉も行う.また,指導医がエコー所見のダブルチェックを行うことで,追加検査が出ることもあり,所見の正確性や信頼性が向上する.技師が血管エコーのプロフェッショナルを目指す時,指導医の存在により進歩の幅が大きく変わる.このことは,超音波検査士を取得するときにも実感している.
<指導医が不在であること>
検査および報告書作成は技師のみで行うことになる.超音波検査士や血管診療技師の資格を持った上級技師が中心となって後進の技師を育てていかなければならず,その責任は重大である.技術指導だけでなく臨床に対応できる能力も磨く必要があるが,偏った知識の伝達になりかねない.自己解決できない症例については上級技師に相談し,結論がでない場合は,得られた情報のみを報告し,依頼医にその後の判断を委ねることになる.血管エコーでは,経験する症例は多岐にわたるため,様々な分野の医師に必要と思われる情報を的確に伝えなければならない.血管疾患に精通していない医師に所見を伝えたとしても,十分に必要な情報が伝わっているのか不安に感じることがある.お互いの知識が不十分であると,伝達に時間を要し,迅速性に欠け,最悪,患者の不利益を生じさせる恐れもある.
<現在当院で行っている指導体制>
現在当院では,指導する際に適宜到達度を確認できるISO15189に沿ったスキルマップを活用している.主治医にエコー検査の結果を正確に伝えるためには,明瞭な画像の描出やポイントを押さえたエコー所見などの精度を向上することが大前提となるが,スキルマップを用いた指導はここで活かされる.しかし,いくら技術を磨いたとしても,臨床面での指導が疎かになってはいけない.そのためには,個々の症例に対応できる医学知識の収集や臨床医と密に交流するための指導も必須と考える.
<指導医の在否で考える問題点>
知識や技術を得ようと講習会に参加する技師を多く見かけるが,講習会に参加したことで満足するのではなく,たとえ他施設であっても,指導医から直接話しを聞く機会を積極的に作り,医師が何を望んでいるのかを教わることが大事である.しかしエコー画像を確認せず,我々が作成したエコー所見のみで診断,治療の適応を判断する医師や,エコー所見が理解できていない医師も少なからずいる.指導医不在の場合,こうした問題点を克服するために,技師も関係診療科のカンファレンスに積極的に参加し,臨床医とのコミュニケーションを図ることで,エコー検査の質が向上するものと考える.
【おわりに】
我々が経験から得たことは,今後の血管エコーの発展には,血管エコー指導医の在否が大きく関わっているということである.今までのような技師中心の講習会だけではなく,臨床に直結した血管エコーの習得を目指し,技師と医師がそれぞれの立場で勉強していけるような機会を作っていくことが重要である.