Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管 2 血管エコーにおける指導育成

(S472)

学生教育の立場からみた血管エコー検査者指導育成

Development of vascular ultrasound sonographer from standpoint in student education

玉井 利奈

Rina TAMAI

倉敷中央病院臨床検査技術部

Clinical Laboratory, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

生理検査の学生教育は心電図,肺機能や脳波検査が一般的である.エコー検査は実技の習得に時間がかかるため,学生の間に十分な教育を行うことが難しい.生理検査の実習は検体検査と比べて一人一人の実習時間が極端に少ない.現在のエコー検査の講義,実習は心エコーと腹部エコーが主であり,それぞれ3時間程度の実習が2〜3回ずつ行われる.生理検査の実習は1グループ5〜6人で実習することが多く,エコー装置も数台しかないため,プローブを触る時間は1回の実習で1人30分程度である.プローブを触ったことのない学生が実習でいきなり画像を出すことは難しく,限られた時間の中で細かい指導を行う時間がないのが実状である.そのため,エコー検査では何が見えているのか分からないまま実習を終える学生も少なくない.
血管に関する講義,実習で主に行われている検査は血圧脈波(ABI)である.その他の血管検査について教える機会は未だ少なく,特に血管エコーに触れる機会は非常に少ない.血管エコーの実習として頸動脈エコーを1回程度行う学校が多いが,学内実習をしないまま病院で見学のみ行う場合も少なくない.頸動脈以外の血管については解剖学で学ぶ程度であり,実際の血管検査についての知識習得は病院実習に頼っている.
学生の間にエコー検査の教育を十分に行うためには,プローブに触れる機会を多く作る必要がある.エコー装置を自由に使える環境と,撮り方を指導できる経験者がエコーの教育には不可欠であるが,実際の教育現場には十分なエコー装置がないことが多く,指導者もほとんどいない.
実際の講義,実習の中で血管エコーを指導することが難しい理由として,血管エコーが国家試験に出題される可能性が低いという現状が挙げられる.一般的に使用される生理検査の教科書は,総項数が500ページ以上あるにもかかわらず,血管エコーに関する記載はたったの4ページである.すなわち,国家試験への合格を目標に掲げる学生教育では,血管エコーはあまり必要とされていないともいえる.しかしながら,近年動脈硬化のスクリーニング検査としての各種血管機能検査の重要性がうたわれるようになり,ABIや血管内皮機能検査(FMD)などの問題が出題されるようになった.今後はさらに血管エコーに関する知識を問う問題も出題される可能性が高く,血管エコーに関する十分な教育は必要であると考える.
血管エコーの教育に時間をとれない現状で血管エコー検査者を育てていくために,学生の研究室配属期間に血管エコーの指導を行う事を提案してみたい.血管エコーは心エコーや腹部エコーと異なり描出にかかる時間が短く,病気も単純で理解しやすい.指導者の元で自らプローブを握り検査を行う環境を整えるためには,研究室配属の期間が絶好の機会であると考える.
血管エコーについての十分な教育がされないまま病院実習を迎える学生に対し,病院実習期間中に現場で学生が血管エコーに触れる機会を確保し,血管エコーのおもしろさを知ってもらう.血管エコーに興味を持たせることが,血管エコー教育の第一歩であると考える.2006年に血管診療技師が誕生して以来,病院内で血管エコーに携わる技師が増え,学生が各実習施設で血管エコーに触れる機会は多くなった.これまで触れる事が少なかった血管エコーに興味を持つ学生が増え,研究室配属の数ヶ月間を通して十分な技術を身に付ける事は今後可能であると考える.