Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション 血管 2 血管エコーにおける指導育成

(S471)

当院で行っている血管エコー検査の指導育成における取り組みについて

Educational System and Management of Vascular Echo in Saiseikai Kumamoto Hospital

大原 未希子1, 泉田 恵美1, 山本 多美1, 富田 文子1, 堀端 洋子2, 西上 和宏3

Mikiko OHARA1, Megumi IZUMITA1, Tami YAMAMOTO1, Ayako TOMITA1, Youko HORIBATA2, Kazuhiro NISHIGAMI3

1社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院中央検査部, 2社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院循環器内科, 3社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院集中治療室

1Central Laboratory, Saiseikai Kumamoto Hospital, 2Cardiovascular Center, Saiseikai Kumamoto Hospital, 3Critical Care and Cardiology, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【はじめに】
血管エコー検査は,その種類が多岐にわたりそれぞれに専門性も求められるので,スタッフの育成が難しい分野である.しかし,その有用性から検査件数は年々増加傾向にあり,新しいスタッフの育成が急務である.専門性を維持させながら新しいスタッフを効率よく育てるために,当院が行っている取り組みについて紹介する.
【当院の概要】
当院の血管エコー関係の有資格者は14名(医師2名,技師12名)で,内訳は血管超音波検査士11名,血管診療技師7名,脳神経超音波検査士6名(医師2名)である.検査項目は,頚部血管・頭蓋内・下肢動脈・下肢静脈・上肢動脈・上肢静脈・透析シャント・腎動脈などの評価を,ルーチン検査として行っている.2014年度の検査件数は,頚部血管2,102件,下肢動脈1,137件,下肢静脈2,751件,上肢動静脈107件,透析シャント143件,腎動脈158件であった.
【当院の取り組み】
1)指導係の配置:当院では新しい検査の研修を開始する際に,研修者1名に対し必ず指導係を1名固定している.指導係は,検査手順の説明や疾患についての学習をサポートし,進捗状況を確認し毎月開催される生理部門ミーティングで報告を行っている.人に教えることで,知識と技術が整理され,指導係自身のスキルアップにもつながっている.
2)リーダー制の導入:各エコー検査におけるリーダーを決め,専門性の維持や全体のスキルアップなどを担う担当者を明確にしている.検査内容の見直しや精度管理などについて,各リーダーが中心になって行うことで情報が集約化され,エコー室全体の活動も効率化した.
3)研修項目のチェックリストの作成:各リーダーを中心に,それぞれのエコー検査において習得してほしい内容をリストアップしたチェック表を作成した.そのため,研修もれや指導係による教育内容のむらが改善された.
4)検査のチェック体制の見直し:研修中のスタッフが検査を行った場合,必ずベテランスタッフがダブルチェックを行っている.これまではチェッカーになる基準が曖昧であったため,ジュニアチェッカーおよびシニアチェッカーになる基準を設けた.研修を受けるスタッフもチェッカーが明確化されたことでチェックの依頼が円滑になった.また研修終了後もチェッカーを目指してスキルアップに取り組むようになった.
5)臨床研修医の教育活動:当院では臨床研修医に対して,技師がハンズオン形式で頚部血管エコー,下肢静脈(深部)エコーのレクチャーを行っている.希望する医師は,エコー室で実際に患者さんの検査も行っている.
【まとめ】
当院では,各検査のリーダーと指導係とをうまく機能させることで,順々に新しいスタッフの育成を行いながらも,専門性を維持することができるようになった.また,チェック体制を見直したことで,研修終了後もチェッカーを目指して学習を行うため,各人のスキルアップにつながっている.各施設により設備や人員配置なども異なるので,一概にこの方法が良いというわけではないが,教育体制の見直しのヒントにしていただければ幸甚である.