Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 1 血管エコー検査を用いた血管機能不全の評価

(S459)

経食道心エコーによる胸部大動脈の動脈硬化性病変の評価と脳梗塞との関連

Relation of Aortic Atherosclerosis by Transesophageal Echocardiography to Risk of Cerebral Infarction

杉岡 憲一, 岩田 真一, 葭山 稔

Kenichi SUGIOKA, Shinichi IWATA, Minoru YOSHIYAMA

大阪市立大学大学院医学研究科循環器内科学

Department of Cardiovascular Medicine, Osaka City University

キーワード :

【目的】
大動脈の血管機能不全は,大動脈解離や大動脈瘤などの大動脈疾患として認められるのみではなく,しばしば動脈硬化性病変である動脈硬化性プラークの形成として遭遇する.大動脈の高度動脈硬化病変は,大動脈径が大きいために冠動脈のように狭窄病変をきたすことは稀である.2010年のACCF/AHAガイドラインにおいても,大動脈の高度動脈硬化性病変であるステージⅥはcomplexプラークと呼ばれる病変とされている.大動脈のcomplexプラークの診断として最も有用であるのは経食道心エコーであり,同法で診断した4mm厚以上のプラーク,潰瘍性プラーク,可動性プラークがcomplexプラークと定義されている.また,胸部大動脈におけるcomplexプラークの存在は,脳卒中の重要な危険因子であることが多くの研究で報告されている.今回,我々は,経食道心エコーにより大動脈弁狭窄症および非弁膜症性心房細動における胸部大動脈の動脈硬化を評価し,脳梗塞との関連について検討した.
【方法】
対象は,経食道心エコーを施行した重症大動脈弁狭窄症116例(AS群)および非弁膜症性心房細動132例(AF群).経食道心エコーにより胸部大動脈の動脈硬化性プラークの評価を施行し,4mm厚以上のプラーク,潰瘍性プラーク,可動性プラークをcomplexプラークと定義した.AS群においてはcomplexプラークと脳梗塞(慢性脳梗塞および周術期脳梗塞)との関連,AF群においてはcomplexプラークと慢性脳梗塞との関連について,ロジスティック解析を用いて検討した.
【結果】
大動脈complexプラークは,AS群では116例中35例(30%)に検出された.一方,AF例には132例中22例(18%)に検出された.AS群における脳梗塞との関連因子は,年齢,冠動脈疾患合併,大動脈complexプラークの存在であった(それぞれP<0.05).AF群における脳梗塞との関連因子は,年齢,CHADS2スコア2点以上,左房内異常(左房内血栓,もやもやエコー,左心耳血流速度低下)および大動脈complexプラークの存在であった(それぞれP<0.05).ロジクティック多変量解析によると,両群ともに大動脈complexプラークは,脳梗塞の独立した関連因子であった(それぞれP<0.05).
【結論】
経食道心エコーで評価した大動脈complexプラークの存在は,大動脈弁狭窄症および非弁膜症性心房細動における脳梗塞の重要な関連因子であった.これらの循環器疾患において,大動脈complexプラークを経食道心エコーで評価することは,脳梗塞のリスクを評価する上で重要であると考えられた.
1)Sugioka K et al. Relation of aortic arch complex plaques to risk of cerebral infarction in patients with aortic stenosis. Am J Cardiol. 2011;108:1002-7.
2)Sugioka K et al. Relationship between CHADS2 score and complex aortic plaques by transesophageal echocardiography in patients with nonvalvular atrial fibrillation. Ultrasound Med Biol. 2014;40:2358-64.
3)Sugioka K et al. Predictors of silent brain infarction on magnetic resonance imaging in patients with nonvalvular atrial fibrillation: a transesophageal echocardiographic study. Am Heart J. 2015;169:783-90.