Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 1 血管エコー検査を用いた血管機能不全の評価

(S459)

冠動脈血流と虚血疾患

Coronary flow pattern in the ischemic heart disease

川崎 俊博

Toshihiro KAWASAKI

西宮渡辺心臓・血管センター臨床検査科

Clinical Laboratory, Nishinomiya Watanabe Cardiovascular Center

キーワード :

超音波診断装置の進歩に伴い,経胸壁ドプラ心エコー図による冠動脈血流を描出することは容易となった.経胸壁心エコー図での冠動脈検出率は左前下行枝(left anterior descending artery ; LAD)で最も高く90%を超えると報告されており,ついで右冠動脈(Right coronary artery ; RCA)では80%以上,左回旋枝(left circumflex artery ; LCX)においても70%以上の検出が可能であるとされている.
経胸壁から描出された冠動脈血流は,急性冠症候群の診断や重症度評価,安定狭心症の診断,冠動脈インターベンションやバイパス手術後の評価にも用いられている.正常の冠動脈血流は低流速で拡張期有意の心尖部に向かう血流シグナルとして検出される.安定した血流シグナルを描出できればパルスドプラ法を用いて,冠動脈血流波形を記録し血流速度を計測する事ができる.正常冠動脈血流速度は30cm/s前後で,拡張期/収縮期冠動脈速度比(diastolic to systolic velocity ratio ; DSVR)はLADで1.6〜1.8でありRCAのDSVRよりも高い.LADの狭窄によりDSVRが低下すると報告されており,感度・特異度ともに非常に高い評価法である.
またアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate ; ATP)負荷を用いた冠動脈血流速予備能(coronary flow velocity reserve ; CFVR)も冠動脈狭窄の評価に有用である.安静時の血流は冠動脈の狭窄度が約85%を超えないと低下してこない.これに対し,負荷を行ったときの最大血流量は冠動脈の狭窄率が約40〜50%を超えると低下してくる.この安静時と負荷時の血流の比(CFVR)をとる事で,冠循環障害を評価する事ができる.CFVRが2.0以下であれば,冠動脈造影上狭窄率70%以上を感度・特異度90%以上で診断することが出来る.近年では心臓カテーテル検査の際に行う血流予備量比(fractional flow resereve ; FFR)が虚血診断のゴールドスタンダードとして用いられているが,このFFRとCFVRが相関するとの報告もある.また冠動脈に有意な狭窄がなければ,CFVRが冠微小循環と冠動脈血管内皮機能を表すと考えられている.日常診療では血管内皮機能検査は主に前腕動脈を用いた血流依存性血管拡張反応(flow mediated vasodilation ; FMD)を用いるが,CFVRも同様の反応を捉える方法と考えられている.
現在ますます生活習慣病の重要性が強調されるようになってきた.CFVRは冠動脈狭窄の評価のみならず心血管イベントの予測因子として利用でき,また種々の治療効果判定にも利用される可能性がある.非侵襲的に繰り返し行う事があるため,今後更なる発展が期待される検査法である.