Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 1 血管エコー検査を用いた血管機能不全の評価

(S458)

血管機能不全(内皮機能障害)と線維化markers間の相関について

Correlation between vascular failure(endothelial dysfunction)and fibrosis markers

藤岡 和美1, 大石 実2, 中山 智祥1, 藤岡 彰3

Kazumi FUJIOKA1, Minoru OISHI2, Tomohiro NAKAYAMA1, Akira FUJIOKA3

1日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野, 2伊豆東部総合病院内科, 3藤岡皮フ科クリニック皮膚科

1Division of Laboratory Medicine, Department of Pathology and Microbiology, Nihon University School of Medicine, 2Department of Internal Medicine, Izutobu General Hospital, 3Department of Dermatology, Fujioka Dermatological Clinic

キーワード :

【目的】
動脈硬化は血管機能不全(内皮機能障害)を端に発症・進展し,複雑で多彩な経路とmultifactorialな病因・病態が交絡する全身性疾患である.血管機能不全の病態生理において血管内皮細胞,平滑筋弛緩作用は重要とされ,また,虚血性心疾患を含む疾患との関連が確立されてきている.診断にはFMD,プレチスモグラフィ,炎症marker等が用いられている.これまで内皮・平滑筋機能をFMD, NMDを含むbrachial artery measuresで検討し,生化学markers(内皮・脂質・糖質・腎・尿酸・炎症)間,systemic low-grade inflammatory stateを示すadiposity markers間,また,炎症,酸化ストレスmarkerであるALT間の相関について報告し,動脈硬化のinitial stepである内皮機能障害が複雑で多彩な病因・病態に基づくことを示唆してきた.近年,肝の炎症,線維化markerであるASTとCVD間の相関や,AST/PLT ratioと内皮機能間の相関を示す報告が散見される.今回,これまでの報告を踏まえ,さらに,炎症,線維化markerであるAST, AST/PLTとbrachial artery measures間に各々相関がみられるか否かの検討を行った.
【対象および方法】
神経内科を受診した患者64人,いずれも肝疾患の無い症例について検討を行った.FMDはInternational Brachial Artery Reactivity Task Forceのガイドラインに従い測定を行った.
【成績】
統計学的検討では相関の検定にSpearmanの相関係数とFisherのr to z変換を用いp<0.05を統計学的に有意と判定した.1)FMDとvWF間(r=-0.303,p=0.021)の逆相関.2)FMD/NMDとvWF間(r=-0.332,p=0.012)の逆相関.3)FMDとAST間(r=-0.301. p=0.020)の逆相関.4)BADとAST間(r=0.218,p=0.094)に相関を認めなかった.5)P-NTGDとAST間(r=0.230,p=0.079)に相関を認めなかった.6)NMDとAST間(r=-0.124. p=0.349)に相関を認めなかった.7)vWFとAST間(r=0.260,p=0.045)の正相関.8)FMD/NMDとAST間(r=-0.214. p=0.104)に相関を認めなかった.9)FMDとAST/PLT間(r=-0.375,p=0.003)の逆相関.10)BADとAST/PLT間(r=0.183,p=0.161)に相関を認めなかった.11)P-NTGDとAST/PLT間(r=0.260, r=0.047)の正相関.12)NMDとAST/PLT間(r=0.094,p=0.481)に相関を認めなかった.13)FMD/NMDとAST/PLT間(r=-0.391,p=0.002)の逆正相関.14)vWFとAST/PLT間(r=0.502,p<0.001)の正相関.
【考察】
MonamiらはASTがCVDの独立したpredictorであることを報告し,underlying mechanismにinsulin resistanceの関与を示唆した.ところで,動脈硬化の発生において,慢性感染症,慢性炎症性自己免疫疾患に基づく全身性炎症の役割が報告されてきている.たとえば,HCV 症例おけるendothelial functionとliver fibrosis間の相関を示す報告には,BaroneのFMDとfibroscan間,内皮のindirect markerとfibrosis間の相関についての報告がある.また,MaieronはvWFとliver fibrosis, cirrhosis markers間の相関よりvWFがliver fibrosis and cirrhosis new markerとなる報告を行っている.今回の検討から,肝疾患のない症例においても何らかの炎症を基盤とした動脈硬化が惹起された場合,血管機能不全だけでなくinflammatory and fibrosis stateをも同時に併せ持つ可能性を考えた.
【結論】
1)血管機能不全(内皮機能障害)はinflammatory and fibrosis stateを反映する可能性を考えた.
2)基準範囲内のhigher AST, AST/PLTは血管機能不全(endothelial dysfunction)とinflammatory and fibrosis stateを同時に併せ持つことが推測された.
3)基準範囲内のhigher AST, AST/PLTの検討は,clinical,subclinicalな疾患の予防や早期発見に有用となる可能性を考えた.