Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 1 血管エコー検査を用いた血管機能不全の評価

(S458)

血管内皮機能を日常診療にいかす

How to use endotherial function test in clinical setting

椎名 一紀, 冨山 博史, 山科 章

Kazuki SHIINA, Hirofumi TOMIYAMA, Akira YAMASHINA

東京医科大学病院循環器内科

Department of Cardiology, Tokyo Medical University

キーワード :

血管内皮機能障害は動脈硬化性血管障害の初期段階であり,その評価は動脈硬化発症・進展の早期病態を評価する有用な指標とされる.近年,超音波を使用した上腕動脈径の変化を評価する血流介在上腕動脈拡張反応(flow-mediated vasodilatation: FMD)や圧トノメトリーを用いた指尖動脈血流変化測定(reactive hyperemia peripheral arterial tonometry: RH-PAT)が臨床使用されている.しかし,これら内皮機能検査は手技的に煩雑であり,測定可能な超音波機器,熟練した検者が必要で普遍性に限界がある.こうした背景から内皮機能検査の標準化はなされておらず,基準値も現時点では設定されていない.現在,我が国ではFMDJ研究として半自動FMD測定装置を使用し,統一されたプロトコールでFMD標準値設定のための多施設共同研究が進行中である.内皮機能障害例では臓器障害が進展し,予後不良である可能性が高い.ゆえに,標準値が設定後に,心電図・心臓超音波検査で評価される左室肥大,GFR・タンパク尿で評価される腎機能障害,頸動脈超音波で評価されるintima-media thickness(IMT)肥厚と同様に,リスク評価の指標になると考えられる.そのためには,より簡便な内皮機能検査法の確立が望まれる.
これまでの報告で,降圧治療のみならず,生活習慣の改善でも内皮機能は改善することがわかってきた.こうした背景から降圧薬・生活習慣改善の治療効果評価の指標としてFMDが有用であると考えられる.すなわち,内皮機能検査はリスク評価だけでなく治療効果も評価可能な診療指標となる可能性を有している.
本シンポジウムでは,FMDを中心とした血管内機能検査の現状と,FMDを日常臨床でいかにいかしていくかを,当院で行っている臨床研究や日常診療での経験を交え議論したい.