Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
パネルディスカッション 腎・泌尿器 2(JSSとの共同企画) 腎泌尿器疾患で必須な超音波所見を得るためのルーチンテクニックを探る

(S450)

腎腫瘍スクリーニングのルーチンテクニック

Routine sonographic technique of renal tumor screening

齊藤 弥穂1, 丸上 永晃2, 平井 都始子2

Miho SAITO1, Nagaaki MARUGAMI2, Toshiko HIRAI2

1医療法人新生会高の原中央病院放射線科, 2奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部

1Department of Radiology, Takanohara Central Hospital, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
スクリーニング検査で腎を観察するのはどういう場面が多いだろうか.日常診療の場では腹痛・腰痛の原因検索や治療中の疾病の定期検査で活用される.各種の検診・健診においても腹部超音波検査を組み込むことが増えている.さらに精密検査の位置づけを担うことも言うまでもない.
三原ら1)の報告では,検診における腎泌尿器癌の受診者発見率は0.04%であり,その半分以上を腎細胞癌が占めている.また早期発見例が多く累積生存率もきわめて高い傾向にある.すなわちスクリーニング検査で腎腫瘍を発見する頻度は高いという認識を持つことが必要であることがわかる.こうした背景を踏まえ,ルーチン検査を行う上で認識すべきことは次のような項目と考えている.
【基本の操作方法】
腎の多方向からの観察と死角の認識は重要である.両腎ともにできるだけ多方向で描出し,十分なティルティングや呼吸性移動を利用して死角になりやすい辺縁部の病変の見落としを避ける.体位変換が有用な場合や,適度な圧迫が腹側から消化管ガスを除けて観察を可能にする場合がある.
【解剖学的知識】
腎は後腹膜臓器である.長軸方向に長楕円形で,腎軸には一定の傾きがあり,両側ともに上極は肋骨の内部に収まる.腎は側腹部や背側から観察できるほか,隣接臓器を音響窓にすることで良好な描出条件を得ることが可能である.日常から内臓の位置関係の立体的把握に努め,症例ごとに描出の工夫を行うとよい.
超音波像での腎実質(皮質および髄質),腎洞部の描出をパターン認識することも病変の拾い上げに有用である.
【診断基準や用語の基準】
腎病変の拾い上げに超音波検査を活用する際,参照すべき資料は多数存在するが,私は次の二つをお勧めする.「腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別」,「腹部超音波検診判定マニュアル」である.これらに基づいて所見を拾い上げていくことで超音波検査は客観性を増し,見落としが防げる.整備された用語や診断基準の使用は,拾い上げた病変を的確に表現し,想定される悪性度を検査実施者から依頼医へと伝達するのにも役立つ.
【代表的疾患の所見や診断の考え方】
腎腫瘍スクリーニングで知っておくべき疾患は,「腹部超音波検診判定マニュアル」に従って代表的なものを押さえるとよい.異常像が検出された時にはその画像所見から,充実性病変,嚢胞性病変,石灰化像,腎盂拡張,形態異常,正常変異に分けて考えていく.このうち充実性病変と嚢胞性病変には悪性疾患が含まれるため,「腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別」を併せて詳細に診断する必要がある.
①充実性病変
充実性腫瘤では,その多くを占める腎細胞癌と腎血管筋脂肪腫の鑑別がもっとも重要で,形状,境界・輪郭,輝度,内部性状から鑑別を行う.腎細胞癌の約7割の組織型を淡明細胞癌が占めることから典型像はこの組織型に基づいている.また,カラードプラ法を併用して腫瘍内の血管構築のパターンを観察し鑑別する.
②嚢胞性病変
腎嚢胞の頻度は高く,通常は無症状で良性に経過するが,時に嚢胞内出血や隔壁の存在などから悪性病変の混在を疑う症例に遭遇する.特に厚く不整な隔壁や充実部を伴う場合,嚢胞性腎細胞癌を除外しなければならない.ここでもやはりカラードプラ法が重要である.
【おわりに】
超音波検査は検者依存があると言われないために,日頃から検査時に意識するべき事項を順に述べた.ルーチンテクニックには基本事項に加えてこうした知識や認識も重要な因子であると考えている.
【参考文献】
1)三原修一.US検診における腎泌尿器癌の現状と早期発見のコツJ Med Ultrasonics Vol.37 No.2(2010)