Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
パネルディスカッション 腎・泌尿器 1 副腎腫瘍の超音波診断

(S448)

副腎の病理:良悪性の鑑別を主眼として

Pathology of the adrenal gland neoplasms: Difficulty in the diagnosis of malignancy

渡辺 みか

Mika WATANABE

東北大学病院病理部

Department of Pathology, Tohoku University Hospital

キーワード :

副腎は外側の皮質と内側の髄質より構成され,両者は発生学的にも機能的にも全く異なる.副腎皮質は中胚葉に由来し,水・電解質代謝に関わる鉱質コルチコイド,炭水化物代謝に関わる糖質コルチコイド,性機能に関わる副腎アンドロゲンといったステロイドホルモンを産生する.一方副腎髄質は神経外胚葉に由来する神経内分泌臓器であり,成人における最大の傍神経節に相当し,カテコラミンを産生する.副腎皮質,副腎髄質いずれも産生するホルモンは全く異なるが内分泌臓器であり,各々に発生する病態も内分泌機能に関連したものが多い.
副腎皮質の良性病変には過形成,腺腫などがあり,悪性病変の代表は副腎皮質癌である.腺腫にはホルモン過剰分泌による症状を来す機能性腺腫,来さない非機能性腺腫がある.皮質癌は全副腎腫瘍の3%と比較的稀な腫瘍であるが,5年生存率が50-70%と予後不良な疾患である.悪性の判定にはWeissのcriteriaが最も一般的に用いられるが,これは,1.高度の核異型,2.核分裂像の増加(>5個/10HPF),3.異常核分裂像,4.好酸性の緻密細胞の割合>75%,5.びまん性の構築,6.壊死,7.静脈侵襲,8.洞様血管侵襲,9.被膜侵襲の9項目中3項目以上存在した場合,副腎皮質癌と診断するものである.このscoring systemは簡便で有用なものであり,高scoreの明らかな悪性像を呈する場合は問題ないが,実際にはscore 2とするか3とするかで迷う症例も少なくない.特に1.高度の核異型は診断者間での差違が出やすく,9.被膜侵襲については標本作製上で正確に描出されないことがあり,overdiagnosisに陥りやすい点といえる.また腺腫との鑑別に加え,腎癌や髄質由来の褐色細胞腫との鑑別を要する場合も少なくない.皮質癌ではandrogen産生腫瘍の割合が多いなどの臨床情報に着目することも重要である.
副腎髄質発生の腫瘍の代表は褐色細胞腫であり,カテコラミン過剰産生による症状を来す場合がある.悪性褐色細胞腫の頻度は副腎の褐色細胞腫で約2.5%-14%,副腎外傍神経節腫では14-50%と報告されており,副腎褐色細胞腫より副腎外傍神経節腫がより悪性度が高く,特に後腹膜傍神経節腫は傍神経節腫の中で最も生物学的悪性度が高いといわれている.悪性傍神経節腫の5年生存率は44-53%と不良であり,後腹膜の悪性傍神経節腫で36%と報告されている.また発症後10年-30年近い後に転移を起こした症例も報告されており,長期間のfollow-upが必要とされる.
悪性褐色細胞腫の診断は,クロム親和性組織以外への遠隔転移や著しい局所浸潤の存在によってなされ,組織学的に悪性の可能性を判断することは非常に困難とされている.2002年にThompsonによりPAS score(PASS: Pheochromocytoma of the Adrenal gland Scaled Score)が提唱され,aggressivityの予測に有用とされているが,病理医間のobserver variationの問題や必ずしも悪性病変と一致しない場合もあることなど,問題点についても報告されている.免疫染色では増殖能のマーカーであるKi67は悪性度予測に有用とされているが,cutoff値をどうするかの一致した見解が得られていない.
副腎の代表的な腫瘍の組織像,良悪性の鑑別を中心として言及する.