Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
パネルディスカッション 腎・泌尿器 1 副腎腫瘍の超音波診断

(S446)

副腎腫瘍の超音波像

Sonographic features of adrenal tumors

白石 周一

Shuichi SHIRAISHI

東海大学医学部付属八王子病院臨床検査技術科

Department of Clinical Laboratory, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

副腎は内分泌臓器であることから,そこに発生する腫瘍はホルモンの過剰分泌をきたす機能性と,過剰分泌をきたさない非機能性に分けられ,それぞれに良性と悪性腫瘍が存在する.機能性については,血液検査などと総合的に臨床診断するべきものであるため,まずは超音波検査で病変を描出し,チェックポイントから腫瘍性状を的確に捉えることが重要である.
副腎腫瘍のチェックポイントは,①サイズ(経過観察の場合は増大の有無)②形状(円形,類円形,分葉状,不整形)③内部エコーレベル(無エコー,低エコー,等エコー,高エコー)④内部エコーの均質性(均一,不均一,囊胞変性,石灰化変性)⑤被膜外や血管などへの浸潤⑥カラードプラによる血流シグナルの状態,などである.また,悪性が疑われる場合には,肝臓やリンパ節などへの転移についても検索する.
副腎腫瘍で最も多いのは皮質に発生する腺腫であり,機能性と非機能性がある.機能性腺腫の一部は,原発性アルドステロン症,クッシング症候群,性ステロイド過剰産生などに関係する.腺腫は超音波検査やCT検査などで偶発的に発見されることが多く,そのほとんどは非機能性である.典型像は,サイズ1〜2cm程度,円形または類円形の低エコー,内部エコーは均一である.
副腎皮質癌は,非常にまれな腫瘍であり,ほとんどは成人に発症するが,小児発症もある.機能性と非機能性に分けられ,60%〜70%にホルモンの過剰分泌がみられる.典型像は,サイズ5cm以上,類円形の低〜等エコー,内部エコーは不均一で囊胞変性を伴うことが多い.カラードプラで腫瘍内に豊富な血流シグナルを認める.
褐色細胞腫は,副腎髄質や副腎外の交感神経節などに存在するクロム親和性細胞から発生する腫瘍である.副腎では両側性にみられることがあり(約10%),多発性内分泌腫瘍症2型など遺伝子変異に関係するものもある.原発巣の病理所見のみで良悪性を鑑別するのは困難とされ,転移の確認が悪性を診断する根拠となる.初回手術時には転移がなく良性と診断され,後に転移が発現し悪性と判明する例もあり,術後の定期的な経過観察が重要である.典型像は,サイズ4cm以上が多く,類円形の低〜等エコー,内部エコー不均一で出血・壊死のため囊胞変性を認めることが多い.カラードプラでは腫瘍内に血流シグナルを認める.両側性に認めることがある.
骨髄脂肪腫は,骨髄造血組織と脂肪組織からなる良性腫瘍である.非機能性であるため,自覚症状を呈することは少ないが,腫瘍径の増大に伴って腹痛や背部痛を呈し,まれに自然破裂をきたすことがある.典型像は,類円形〜楕円形の高エコー,サイズが大きくなるにつれ内部不均一となる.片側性にみられる.巨大なものでは後腹膜の脂肪肉腫との鑑別が必要になることがある.
神経芽腫は,交感神経系の原始神経芽細胞から発生する腫瘍で,原発部位としては副腎,後腹膜,胸部などが多い.尿VMAマススクリーニング陽性が80%と多いが,偽陽性やVMA非産生性の腫瘍もある.典型像は,サイズの大きな等〜軽度高エコー,内部に微細なstrong echoを伴うことが多く,囊胞変性をきたすこともある.
悪性リンパ腫は,二次性の細胞浸潤によるものが多く,原発性はまれである.二次性のものは両側性に認めることが多い.
転移性副腎腫瘍の原発巣は,肺,乳腺,腎臓,胃,膵臓,卵巣,大腸などが多い.半数以上は両側転移である.サイズは小さなものから大きなものまでさまざまで,エコーレベルも軽度低〜等〜軽度高エコーまでさまざまである.増大すると内部不均一に描出される.下大静脈などに腫瘍塞栓をきたすことがある.