Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
シンポジウム 腎・泌尿器 1(一部英語) 透析腎癌や診断困難な腎腫瘤に対する造影超音波検査の有用性

(S439)

透析腎癌診断に対する造影超音波

Contrast enhanced echo for diagnosis renal cell carcinoma of hemodyalysis kidney

尾上 篤志1, 杉本 公一2, 秋山 隆弘3

Atushi ONOUE1, Koichi SUGIMOTO2, Takahiro AKIYAMA3

1医療法人計行会髙橋計行クリニック超音波室, 2近畿大学医学部泌尿器科, 3堺温心会病院泌尿器科

1Ultrasonic Labatory, Takahashi Kazuyuki Clinic, 2Department of Urology, Kindai University Faculty of Medicine, 3Department of Urology, Sakai Onshinkai Hospital

キーワード :

透析腎癌が高率に発生することは良く知られているが,早期の小さな腫瘤での診断は容易でななく,時には数年にもおよぶ経過観察により患者の負担は大きく,エコーと共に多用されるCTでは頻回検査による被曝の問題もある.もう一つ忘れていけない問題は,維持透析患者の腎移植治療時,ドナー,レシピエント共に小さな腎癌を検出し診断できるかは,移植後の腎癌発生を予防する上で非常に重要であり,ごく小さな腎腫瘍を検出し,腎癌と診断できるかが課題である.
腎癌の診断は腫瘍の局在診断と,腎癌による腫瘍新生血管の検出により診断されるが,透析腎は腎の終末像であり腎は萎縮しBモードによる描出能が低下するだけでなく,血管は荒廃し血流が乏しく血流速度も遅い.同様に腎癌も血流が乏しく血流速度も遅いと考えられるため超音波診断法のうちBモードとカラードプラではこの課題を解決することは困難と言える.一方,造影超音波診断用として臨床応用されたレボビストでの透析腎癌の成績は腎実質部の染影がpoorであっても腎癌部は明瞭に染まることから有用な検査法と考えられた.しかし,高音圧でマイクロバブルを破壊して造影効果を得る特性上造影可能時間が短く,腫瘍が小さい場合,新生した腫瘍血管の検出は困難という課題が残った.その後登場したソナゾイド®は現在わが国で唯一臨床使用が可能な超音波診断用造影剤で,保険適応上腎癌は無いものの,腎機能に影響を与えないため,透析患者にも安全に使用可能で,これを用いた造影検査法を確立することが望まれる.
本講演では,健常腎と透析腎に発生する腎癌に対するソナゾイド®造影超音波診断のわれわれの成績を提示し,現時点における透析腎癌の造影超音波診断法の有用性と限界を明らかにしたい.