Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 腎・泌尿器
シンポジウム 腎・泌尿器 1(一部英語) 透析腎癌や診断困難な腎腫瘤に対する造影超音波検査の有用性

(S438)

泌尿器科医の立場から期待する造影超音波検査

The potential of contrast-enhanced ultrasound- From the view of the urologist

中井川 昇

Noboru NAKAIGAWA

横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器科学

Department of Urology, Yokohama City University Graduate School of Urology

キーワード :

腎癌の診断,治療に携わる泌尿器科医にとって,低侵襲かつ簡便に標的病変の血流を評価できる造影超音波検査は診療の様々な場面で応用が期待される新たな診断ツールである.本邦においては腎疾患に対する本検査の保険適応が認められていないためにエビデンスとなる報告はできないが,泌尿器科医の立場から本検査の可能性について言及したい.
腎に腫瘤性疾患を認めた初期診断においては腎機能が低下しているためにCTスキャンやMRIによる造影が困難な症例,嚢胞性疾患との鑑別が困難な症例,更には近年増加傾向にある小径腎癌症例において本検査が有用であることは言うまでもないが,近年の分子標的治療薬の出現によって薬物療法の選択を目的として見直されている腎腫瘍に対する経皮的針生検の際に本検査を用いることによって壊死組織や変性化した組織を避けて病理診断に適した腫瘍組織を採取することでその診断率を上げられる可能性があると思われる.
また,比較的稀な疾患ではあるが,フォン・ヒッペル‐リンダウ(VHL)症候群,バート・ホッグ・デュベ(BHD)症候群に代表される家族性腎癌症例では,比較的若年で腎癌が多発性に発症し生涯これを繰り返すことから,いかに数少ない外科的治療で正常腎組織を温存しつつ腎癌の進行をコントロールするかが大きな課題とされている.一般的には腫瘍径が2cmを超えた時点での腎部分切除術が推奨されており,この際に標的病変以外の小さな腫瘍をできる限り診断し同時に摘出することが重要であり,現在は術中に通常の超音波検査によって微小腎癌を検出してこれを摘出している.もし造影超音波検査によって微小病変の検出率を上げることができれば,より少ない手術によって本疾患をコントロールできる可能性があるのではないかと考えている.
さらに,手術が困難な進行性腎癌に対する現在の薬物療法の主役は血管新生阻害を目的としたtyrosine kinase inhibitor(TKI)である.本薬剤は従来の抗がん剤のように腫瘍縮小効果が乏しいためにその効果を判定するために造影CTスキャンによる造影効果の低下や,PETによるFDGの集積の低下によって評価を行うなどの試みがされている.しかし,これらの画像検査は被曝量,造影剤,経済性の問題から頻回な評価が困難である.安全かつ簡便に血流評価が行える造影超音波検査による評価を併用することによってより適切なタイミングで血管新生阻害剤の血管阻害効果を評価し,適切な薬剤の選択や容量設定に活用することができれば,効率の良い治療選択と過剰な薬物投与を防ぐことによって進行性腎癌患者の長期生命予後と生活の質の向上が可能になるのではないかと期待される.
本シンポジウムではこれらの場面での活用を想定した上で諸家の報告を紹介し,腎腫瘍診療における造影超音波検査の将来像についてディスカッションをしたいと考えている.