Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺
シンポジウム 甲状腺 Joint(JSUM・AFSUMB・JABTS Joint Session)(English) Artifacts and Pitfalls in Elastography of the Breast and Thyroid Ultrasound

(S428)

石灰化がstrain elastographyにおよぼす影響

Effect of microcalcifications on strain elastography : fundamental research

柏倉 由実1, 植野 映1, 脇 康治2

Yumi KASHIKURA1, Ei UENO1, Koji WAKI2

1筑波メディカルセンター病院乳腺科, 2日立アロカメディカル株式会社第一技術開発部

1Department of Senology, Tsukuba Medical Center Foundation, 2Engineering R&D Department1, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【背景と目的】
乳癌の良悪性の鑑別診断において,strain elastographyは有用であるが,false negativeを示す症例を経験することがある.それらの症例を観察していると,石灰化を含んでいる症例が多いように思われた.そこで,石灰化を伴う乳癌に対するstrain elastographyを,当院のpTis〜pT1b病変で後方視的に検証を行ったところ,Tsukuba Elasticity Score(TES)=1〜2を示した症例は石灰化を伴わない51例では1例(2.0%)のみであったのに対し,石灰化を伴う66例では17例(25.8%)で,両群に差が認められた.このことより,石灰化がstrain elastographyのfalse negativeの原因となるアーチファクトを生じている可能性があると考えた.石灰化のstrain elastographyへの影響を考察するため,ファントムモデルを作成し,検証を行うこととした.
【対象と方法】
微小石灰化を模した媒質を含むエラストグラフィ用ファントムを作成した.低弾性の高分子ポリマー素材中に弾性の異なる素材を内包し,さらにその内部に微小石灰化を模造する物質として,50μm大のハイドロキシアパタイト,200μm大のキュービックジルコニアを封入した.このファントムを用いてstrain elastographyを撮像し,観察を行った.
【結果】
ハイドロキシアパタイト・キュービックジルコニアともに,ファントム内に高輝度エコーが確認できた.どちらのファントムにおいても点状高エコーの周囲に歪みを生じる現象が認められたが,ハイドロキシアパタイトでこの現象はより高頻度に認められた.
【考察】
実際にES=1〜2を示した乳癌の症例を観察すると50μmを下回るような,より小さな石灰化を含んでいる症例が多いように見受けられていたが,ファントムでの検証実験でも,200μmのキュービックジルコニアよりも50μmのハイドロキシアパタイトのほうでより高頻度に現象が確認できた.スライス断面の微小なずれによる影響,超音波による微小石灰化の振動などの影響を考えるが,まだartifactの原因は明らかではなく,今後も検証を続ける必要がある.Elastographyは比較的新しい技術であり,我々はまだそのartifactを十分に理解できていない可能性があり,画像を正しく理解するためにはどういうartifactがあるのかを明らかにしていく必要があると考える.