Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 甲状腺
シンポジウム 甲状腺(JSUM・JABTS共同企画) 新しい甲状腺結節超音波診断基準を巡って

(S426)

甲状腺結節の良悪性の鑑別におけるカラードプラとエラストグラフィの有用性

The role of color Doppler and elastography for differential diagnosis between benign and malignant thyroid tumor

宮川 めぐみ

Megumi MIYAKAWA

虎の門病院内分泌代謝科

Endocrine Center, Toranomon Hospital

キーワード :

現在ではほとんどの超音波装置でカラードプラ機能を有しており,Bモードに加えてカラードプラによる血流情報から甲状腺結節の良悪の鑑別に有用であることは多くの報告がある.カラードプラでは結節内の血流分布や腫瘍血管の血流解析(FFT解析)を行うことで良悪性が鑑別でき,ロジスティック解析でも悪性を疑うリスク因子の一つとして「結節内血流あり」はOR:14.23と高い結果が得られている.実際には,繊細・単調,なだらかな血流,境界部に沿う血流は濾胞腺腫をはじめとする良性腫瘍に特徴的である.一方,屈曲蛇行する血流,モザイク状の血流シグナル,貫入・貫通する血流は甲状腺癌に特徴的である.またその血流解析を行い,pulsatility index【PI:(Vmax−Vmin)/Vmean】やresistance index【RI:(Vmax−Vmin)/Vmax】を求めることで良悪性の鑑別に有用な情報が得られる.
また,組織弾性評価(エラストグラフィ)については,I)組織弾性イメージング(Elasticity Imaging: EI)としてa)用手圧迫法とb)音響圧迫法があり,II)組織弾性定量としてはa)組織弾性イメージング(EI)における半定量,b)shear wave速度計測,c)shear wave elastographyの任意ROI内の平均値がある.Real-time Tissue Elastography(RTE)についての報告ではその感度,特異度はそれぞれ81.8〜97%,81〜100%と非常に高く,Shear wave elastographyの報告でもcut off値は34.5〜90.3 kPaと幅があるが,感度80〜90.3%,特異度71.1〜93.9%と良好な成績が出されている.Real-time Tissue Elastography(RTE)を用いた当院での結果でも,乳頭癌症例では微小癌を含めて全例でGrade 3〜4を示し,濾胞癌ではGrade 3が多かったが一部濾胞腺腫との鑑別が困難な例もみられた.一方非腫瘍性病変である腺腫様結節ではGrade 1〜2の場合がほとんどであり,全体での感度は91.3%,特異度は80.2%と良悪の鑑別に非常に有用な結果が得られた.また腫瘍部と前頸筋のStrain Value(SV)を測定してStrain Ratio(SR)を出すことで半定量的に良悪を鑑別することができ,良性でのSR:0.76±0.31に対して悪性ではSR:0.24±0.15と有意(p<0.001)に低値であった.
甲状腺結節の超音波診断においてBモード所見が最も重要であるが,カラードプラおよびエラストグラフィの所見を加えることでより総合的に良悪性の鑑別が可能であり,新しい診断基準の一つに加えるべきと考える.