Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 乳腺
ワークショップ 乳腺(JSUM・JABTS共同企画) 乳がんに対する薬物療法の効果判定

(S420)

術前化学療法開始前のElastography FLR評価と治療効果との関係

Value of elastography can predict response to neoadjuvant chemotherapy in breast cancer?

林 光博1, 岩瀬 弘敬2

Mitsuhiro HAYASHI1, Hirotaka IWASE2

1国立研究開発法人国立がん研究センター臨床薬理部門, 2熊本大学乳腺内分泌外科

1Molecular Imaging and Pharmacokinetics, National Cancer Center, 2Breast and Endocrine Surgery, Kumamoto University

キーワード :

【背景】
乳房超音波Elastographyは腫瘍弾性度を客観的に評価することが可能であり,乳房病変の良悪性鑑別に用いられるほか様々な適用が探索されている.一方,乳がん薬物療法においては種々の機能的画像検査による評価が,その治療効果予測や効果判定に有用となる可能性が示されている.そこで今回,治療開始前の乳がんElastography評価とその後の治療効果との関係を検討した.
【対象と方法】
熊本大学乳腺内分泌外科にて術前化学療法を行った原発性乳癌のうち,治療前にElastography評価を行っていた97症例を対象とした.これらにおいて術前化学療法の病理学的治療効果とStrain Elastography(EUB-8500)によるFLR評価との関係を検討した.
【結果】
FLR中央値を用いてHard tumor 49例とSoft tumor 48例に層別化し,病理学的治療効果との相関を解析したところ,Hard tumorではpathological CR率20.4%,Soft tumorでは52.1%であり,有意にHard tumor群で低値であった(P = 0.0015).また平均腫瘍縮小率はHard tumor群53.2%,Soft tumor群71.6%とHard tumor群で低い結果であった(P = 0.027).pathological CRに対する多変量解析を行うと,HER2発現やKi67 indexと並んで,FLRによる乳がん弾性度評価が独立した効果予測因子であった(オッズ比0.20,95%CI 0.05-0.67,P = 0.008).またFLRのカットオフ値を中央値以外に変更した場合でも,上記多変量解析において乳がん弾性度評価は有意な因子であった.
【考察】
Elastographyによる治療前の乳がん弾性度評価が,その後の術前化学療法の効果と関連する可能性がある.近年基礎研究で指摘されている腫瘍弾性度と治療抵抗性との関係を,Elastographyを用いて臨床的に検討していくことが期待される.