Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 乳腺
パネルディスカッション 乳腺 2(JSUM・JABTS共同企画) 乳房超音波検査は病理組織診断にどこまで迫れるか

(S416)

日常乳腺診療におけるComprehensive ultrasound diagnosisの検討

Comprehensive ultrasound diagnosis in clinical practice of breast disease

奥野 敏隆1, 大石 悠香2, 山野 愛美2, 登尾 薫2, 内田 浩也2, 廣瀬 圭子2

Toshitaka OKUNO1, Yuka OISHI2, Megumi YAMANO2, Kaoru NOBORIO2, Hiroya UCHIDA2, Keiko HIROSE2

1西神戸医療センター乳腺外科, 2西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Breast Surgery, Nishi-kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Nishi-kobe Medical Center

キーワード :

【背景と目的】
乳腺超音波の基本はBモード法である.それにカラードプラ法とエラストグラフィを追加する手法を中島らはcomprehensive ultrasound diagnosisと呼び,診断能の向上を図るべく提唱している.乳癌検診の普及に伴い,精密検査を要する乳腺腫瘤が急増している.それらに対して良悪性の判断と診断手順を客観的に示すために2から5のカテゴリーが付与される.カテゴリー3b以上の腫瘤に対しては通常穿刺吸引細胞診や穿刺針生検が行われる.受診者に少なからぬ身体的・精神的侵襲を加えるにも関わらず,大半が良性腫瘤と診断されて経過観察される.要精密検査となった良性乳腺腫瘤に対して,穿刺生検を行わず,超音波で良性と判断することは喫緊の課題である.そこで,日常の乳腺診療におけるcomprehensive ultrasound diagnosisの成績を振り返り,本法による穿刺生検回避の可能性を検討した.
【対象】
2015年4月から12月に当院乳腺外来で乳腺超音波検査を行い,comprehensive ultrasound diagnosisを行った114人,139腫瘤を対象とした.年齢は51.2±14.7歳,腫瘤径は10.7±5.8mm.使用機種は日立アロカ社製Noblus,探触子はL55を用いた.
【方法】
Bモード法(以下B)に引き続きカラードプラ(以下CD)とエラストグラフィ(E)を行い,それぞれ特徴的な静止画像を撮像した.乳房超音波診断ガイドラインに準じてBモードカテゴリー判定を行った.カラードプラで悪性を示唆する貫入・貫通する血流,周辺の血流増加,複数の流入血流(嚢胞内腫瘤の場合)を認めた場合は+1を,良性を示唆する血流の欠如,境界に沿った血流,1本の流入血流(嚢胞内腫瘤の場合)を認めた場合は-1をBのカテゴリーに追加したものをB+CDのカテゴリー判定とした.また,Eでスコア1あるいは2を示した場合は-1を,スコア4あるいは5を示した場合は+1をBモードカテゴリーに追加したものをB+Eのカテゴリーとした.同様にB+CD+Eのカテゴリー判定を行った.カテゴリー2,3を良性,カテゴリー4,5を悪性と判断して,B,B+CD,B+E,B+CD+Eそれぞれの超音波診断能を,臨床診断を対照として算出した.さらに良性腫瘤のうち,Bでカテゴリー3b以上が付与されたもののうち,B+CD+Eでカテゴリー3aあるいは2となったものを算出した.
【結果】
臨床診断は良性120腫瘤,乳癌19腫瘤であった.良性のうち切除例は3例,2年以上の経過観察例が31例(うち細胞診施行例5例),2年未満経過観察例が86例(細胞診施行例16例).乳癌は全例手術を行った.これらの臨床診断を対照とした診断成績は,感度,特異度,正診率の順に,B:84.2%,97.5%,95.7%,B+CD:57.9%,99.2%,93.5%,B+E:73.7%,95.8%,92.8%,B+CD+E:73.7%,99.2%,95.7%であった.Bモードでカテゴリー3b以上が付与された24の良性腫瘤のうちB+CD+Eでカテゴリー3aあるいは2となったものは19腫瘤であった.
【考察】
乳癌19例中6例で血流を認めず,また5例がエラストスコア2を示し,その結果B+CD+Eの偽陰性が5例あり,その感度が低くなった.いっぽう良性腫瘤139例のうちB+CD+Eでカテゴリー4以上となったものはflorid adenosisの1例のみで,Bモードに比べて特異度の向上が得られた.Bモードでカテゴリー3b,4であった24の良性腫瘤のうち19腫瘤がB+CD+Eでは経過観察でよいカテゴリー3a,2となった.Comprehensive ultrasound diagnosisが無用の穿刺生検の回避に有用である可能性が示唆された.なお,良性腫瘤のうち病理診断が確定したものは3例のみで,大半が画像と臨床所見をもとにした臨床診断を確定診断としており,経過観察ののち診断能の再評価が必要である.