Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 乳腺
パネルディスカッション 乳腺 1(JSUM・JABTS共同企画) 乳腺における血流診断(造影なしで血管がどこまで見えるか)

(S409)

乳腺疾患における新生血管形態に関する考察

Consideration about the tumor angiogenesis and vasculogenesis form in the mammary diseases

畠 榮1, 中島 一毅2, 物部 泰昌3

Sakae HATA1, Kazutaka NAKASHIMA2, Yasumasa MONOBE3

1川崎医科大学附属川崎病院病理部, 2川崎医科大学附属川崎病院外科, 3川崎医科大学附属川崎病院病理科

1Department of Pathology, Kawasaki Hospital, Kawasaki Medical School, 2Department of Surgery, Kawasaki Hospital, Kawasaki Medical School, 3Department of Pathology, Kawasaki Hospital, Kawasaki Medical School

キーワード :

【目的】
血管新生は,生体内の病的局面で観察され,特に外傷,炎症,虚血,腫瘍などでは病状の進展,治癒過程で重要な働きをしている.これまで成体の血管形成メカニズムは,既存血管の構成要素のうちの一つである内皮細胞が増殖・遊走して新たな血管を作り出す血管新生(angiogenesis)という概念が中心であった.しかし,1997年に成人抹消血中に血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell: EPC)が発見されて以来,胎生期にのみ認められるとされていた血管発生(vasculogenesis)という現象が成体においても同様に認められ,局所でEPCが増殖・分化し血管新生に関わっていることが明らかになった.特に腫瘍と関連する血管新生は血管発生型であると考えられている.今回の発表では乳腺疾患における新生血管の形態に関する所見を中心に報告する.
【対象および方法】
川崎医科大学附属病院および附属川崎病院で,液状化細胞診検体処理法(LBC法)を行った穿刺吸引細胞診症例で病理組織検査が施行われたものを対象とした.
検討内容としては,LBC標本で認められた血管間質の出現パターンを,「Uターン型の血管」※,「分岐状血管型」,「毛細血管型」,「血管瘤形成型(vascular aneurysm formation type)」および「微小血管の増生(microvascular proliferation)」に分類し,組織型と比較検討した.一方,架橋成熟したコラーゲンなどの細胞外マトリックスや軟骨でのChondromodulin-1(ChM-1)が血管阻止因子として関与していると考えられる硬癌病変や軟骨成分を有する基質産生癌などの血管間質の形態についても検討比較し報告する.
【結果および考察】
Uターン型の血管は,LBC標本で認められる乳頭状血管所見は乳頭腫,非浸潤性乳管癌乳頭型,充実乳頭癌で認められた.乳頭腫では血管周囲に結合組織や筋上皮細胞を伴う血管が多く観察された.一方,乳頭癌などの症例では血管内皮細胞のみからなる辺縁が平滑な“裸血管”が観察された.これらの所見は乳頭腫と乳頭癌を細胞学的に鑑別する一助になると考えられた.分岐状血管は,腫瘍間質に認められる分枝状毛細血管が細胞採取あるいは標本作成時に切断,分離された状態の血管のことで,粘液癌の純型type Aで観察された.粘液癌では背景に粘液とともに多数の分岐した毛細血管が認められる.これらの血管は細胞採取時に末端が断裂するため,いわゆる“行ったきり血管”として観察された.毛細血管型は,狭義および広義の硬癌症例で少数認められた.これらの理由としては,架橋成熟したコラーゲンなどの細胞外マトリックスによる新生血管障壁と考えられた.一方,基質産生癌や軟骨および骨への分化を呈する化生癌では,ChM- 1による障壁のため血管はみられなかった.また,線維腺腫および葉状腫瘍においても幼弱な間質は観察されたが,新生血管は認められなかった.なお,血管瘤形成型や微小血管の増生,“いわゆるglomerular structure”の血管は乳癌では観察されなかった.
【結論】
乳腺疾患における新生血管は疾患により異なる形態を呈する.新生血管の形態を検討することにより,超音波ドプラ法の画像を読み解く一助になると考えられた.
※「Uターン型の血管」とは,乳頭状構造の軸をなす血管が分岐し,その先端がアルファベットのUに形態が類似した構造を呈している血管のこと.