Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 乳腺
シンポジウム 乳腺(JSUM・JABTS共同企画) 乳腺における造影超音波の位置づけ

(S400)

乳房造影超音波検査におけるパラメトリックイメージ

Parametric imaging of contrast-enhanced ultrasound for breast tumor

中村 卓1, 2, 平井 都始子3, 野呂 綾4, 小川 朋子4, 芳賀 真代5, 伊藤 高広5, 丸上 永晃3, 田中 幸美1, 小林 豊樹1, 中島 祥介1

Takashi NAKAMURA1, 2, Toshiko HIRAI3, Aya NORO4, Tomoko OGAWA4, Masayo HAGA5, Takahiro ITO5, Nagaaki MARUGAMI3, Yukimi TANAKA1, Toyoki KOBAYASHI1, Yoshiyuki NAKAJIMA1

1奈良県立医科大学附属病院消化器外科・小児外科・乳腺外科, 2名張市立病院乳腺外科, 3奈良県立医科大学附属病院中央内視鏡・超音波部, 4三重大学医学部附属病院乳腺外科, 5奈良県立医科大学附属病院放射線科

1Department of Surgery, Nara Medical University, 2Breast Surgery, Nabari City Hospital, 3Department of Ultrasonograpy, Nara Medical University, 4Department of Breast Surgery, Mie University Hospital, 5Department of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
超音波造影剤であるソナゾイド®が乳腺領域に適応拡大になって数年がたつが,造影超音波検査が乳腺領域に広まっているとはいいがたい.その原因の一つに,造影される範囲がわかりにくい,という事がある.
造影MRI検査でも経験されることだが,腫瘍の背景乳腺に増殖性変化が強い場合(若年者や月経直前など),背景乳腺も造影されるため,静止画ではBモードに比べて格段に見やすくなった,という印象に乏しい.
【パラメトリックイメージとは?】
画像診断において,ある一定のパラメーターに対して色を付け,加工をした画像をパラメトリックイメージと呼ぶ.例えば,PET画像のSUV値に応じて色分けして表示する方法などである.海外では乳房造影MRIに対してもこの方法が普及している.
造影超音波検査においても,パラメトリックイメージを作成することができる.日本の現状では造影される時間軸に応じて,色分けすることが主流になっている.
肝臓分野においては動脈相と門脈相に相当する時間で色分けをし,腫瘍や肝硬変の程度の評価に応用が期待されている.
乳腺領域では海外からの報告で,Time Intensity Curve(TIC)から計算されるArea Under the Curve(AUC),最高輝度値などを用いたパラメトリックイメージの報告もある.また,術前薬物療法時の効果判定にも用いられている.
【パラメトリックイメージの作り方】
日本では,リアルタイムに撮影した動画データをいったん超音波機器内に保存し,そのデータから積算画像を作成する際に,時間軸に応じて色分けする方法が主流である.
今回我々は,乳癌の造影超音波検査におけるパラメトリックイメージの有用性について,当院倫理委員会承認(UMIN000013345)のもと,多施設で前向きに検討した際,最適な色分けの方法についても検討した.
<対象>
2014年4月から2015年3月に乳癌の手術を行った患者66例中の初期の30例.
<方法>
超音波診断装置はLOGIQ S8(GEヘルスケア社),プローブは11Lを用いた.
ソナゾイド®は,懸濁液0.01ml/kgを前腕より静脈内投与した.プローブは一断面で固定し,ソナゾイド®投与後約50秒間の動画データを装置内に保存した.腫瘍に造影剤が最初に到達した時点(ゼロ点)から,Time to Peak(TTP)を含む5秒から14秒の積み重ねでパラメトリックイメージを作成した.パラメータはarrival timeとした.
<パラメトリックイメージ>
色の付け方で視認性に違いが生じるか確認するため,4パターンの画像を作成した.
・腫瘍に造影剤が最初に到達した時点をゼロ点とし,続けて造影剤の到達したピクセルを,到達時間1秒間隔で赤から紫へ順に色付けするパターン(P1).
・既存の血管と腫瘍血管を区別するために,ゼロ点から1秒間をブランク(透明)とし,続けて造影剤の到達したピクセルを,到達時間1秒間隔で赤から紫へ順に色付けするパターン(P2).
・TTPの平均値が8.6秒であったため,0〜8秒までを赤のみで色付けし,以降を到達時間1秒間隔で赤から紫へ順に色付けするパターン(P3).
・0〜8秒までを赤のみで色付けし,以降を青一色で色付けするパターン(P4)
<結果>
4種類のパラメトリックイメージの見やすさを比較したところ,最も見やすいと判断されたのはP1のカラースケールだった.
1秒毎に色が変わることで,暖色が多いか,寒色が多いかで,腫瘍に流入する血流のスピードが静止画でも表示可能になったためと思われる.
【パラメトリックイメージの臨床応用】
①腫瘍範囲の視認性の向上
②術前薬物療法後の治療効果判定
など,様々な場で臨床応用がなされようとしている.今回は症例を提示して,うまくいった場合,うまくいかない場合,その原因について提示したい.