Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
ワークショップ 産婦人科 胎児治療における超音波診断の役割

(S393)

Macrocystic CCAMに対する嚢胞羊水腔シャント術の有効性と課題〜自験2例と文献考察から

Effectiveness and problems of fetal shunting operation for macrocystic congenital cystic adenomatoid malformations of the lung

日高 庸博1, 佐藤 由佳1, 城戸 咲1, 原 枝美子1, 村田 将春1, 藤田 恭之1, 加藤 聖子1, 永田 公二2, 田口 智章2

Nobuhiro HIDAKA1, Yuka SATO1, Saki KIDO1, Emiko HARA1, Masaharu MURATA1, Yasuyuki FUJITA1, Kiyoko KATO1, Koji NAGATA2, Tomoaki TAGUCHI2

1九州大学病院産科婦人科, 2九州大学病院小児外科

1Department of Obstetrics and Gynecology, Kyushu University Hospital, 2Department of Pediatric Surgery, Kyushu University Hospital

キーワード :

【背景】
Macrocystic CCAM胎児に対する嚢胞羊水腔シャント術の報告は一定数あるが,散発的な症例報告やsmall seriesにとどまり,その検証は十分でない.腫瘤体積を頭囲で除するCVR(CCAM Volume Ratio)が1.6を超えると胎児水腫発症リスクであること,胎児水腫合併例を待機観察した場合の予後が不良であることから,CVRが1.6を超える例と腔水症例をシャント術の対象とする方針は,胎児治療施設において広く採用されている.しかし胎児水腫を合併せずとも予後良好でない症例が存在し,胎児水腫という観点のみから治療適応を決めることには一定の限界も想定される.
【目的】
Macrocystic CCAMに対する嚢胞羊水腔シャント術例の臨床経過と超音波所見をまとめ,その有効性を検証すると共に,治療基準の課題を明らかにする.
【方法】
胎児水腫を合併しシャント術を行った自施設の2症例とPubMed,医中誌で検索しえた同様の56報告例を対象とした.
【結果】
(症例1)
33歳の経産婦.妊娠18週に多房性のmacrocysctic CCAMと診断,胎児胸腔内はほぼ腫瘤に占拠され,CVRは2.00で,妊娠20週で胎児水腫を呈した.妊娠22週で嚢胞羊水腔シャント術を施行し嚢胞の縮小と胎児水腫の改善に成功した.シャント不全は発生しなかった.ただ,嚢胞数が多く,シャント術で2つの嚢胞を消失させたものの,ドレナージされない複数の嚢胞がCVR換算で0.6-0.8程度で残存した.妊娠37週で出生した児は肺高血圧に伴う著明な呼吸不全,呼吸性アシドーシスを認めた.緊急開胸とし,右中・下葉に及ぶ嚢胞腫瘤を可及的に切除した.術後も肺高血圧が遷延し,一酸化窒素やプロスタグランジンI2製剤の投与を要したが,集中管理により生後2週頃から呼吸条件の改善を認め,22生日に抜管,その後生存退院した.
(症例2)
43歳の経産婦.妊娠24週に胎児水腫を伴うMacrocystic CCAMと診断し,CVRは2.71であった.妊娠25週で嚢胞羊水腔シャント術を行い,嚢胞は速やかに縮小し術後9日までに胎児水腫も改善した.多房性ではあったが,ドレナージされた最大嚢胞以外の腫瘤は十分小さく,CVR計測が困難な程度であった.シャント不全は発生せず,妊娠37週で出生した児は生直後に呼吸障害を呈することなく,17生日に待機的に外科手術が行われ,生存退院した.
(文献のまとめ)
56例の報告の中で,初回手術週数の中央値は25週(17-30週)で,胎児死亡例と分娩週数の明らかでない例を除いた44例の分娩週数の中央値は37週(27-41週),34週未満の分娩は9例(20%)のみで,高い妊娠期間延長効果がみてとれた.生後の予後が明らかな51例のうち生存は37例,生存率は73%であった.死亡した14例の死因の多くが肺低形成となっており,また生存例においても肺高血圧症を呈するなどしてECMOで管理されたものが存在していた.
【考察】
自験例2例は共にCVRが1.6を超えていた.症例1で生後の対応に苦慮した要因の1つは,嚢胞数が多かったことにある.シャント術後に胎児水腫は速やかに改善したものの,残存した肺腫瘤が長期にわたり正常肺を圧排し続けることになった.致死的でなかったにせよ,生後の肺高血圧治療に難渋した.
【結論】
Macrocystic CCAMに対するシャント術では,胎児水腫改善効果が速やかでシャント不全も起こりにくいと推測され,長期にわたる有効なドレナージが得やすい.一方で,腫瘤が多房性である場合には,術後も一定サイズの腫瘤が残存することになる.残存腫瘤のCVRが1.6以下であれば胎児水腫の状態は避けられることが期待されるが,肺低形成・肺高血圧のリスクは残存する.呼吸合併症の発生は胎児水腫や1.6を超えるというCVR値だけでは推察しえない.ここにシャント術の適応再考の余地が考えられた.