Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
ワークショップ 産婦人科 胎児治療における超音波診断の役割

(S392)

胎児鏡下レーザー凝固術後の卵膜のトラブルに関する検討

Postoperative chorio-amniotic membrane defect after fetoscopic laser photocoagulation for twin-twin transfusion syndrome

山本 亮, 石井 桂介, 武藤 はる香, 馬淵 亜希, 川口 晴菜, 金井 麻子, 生野 寿史, 林 周作, 光田 信明

Ryo YAMAMOTO, Keisuke ISHII, Haruka MUTO, Aki MABUCHI, Haruna KAWAGUCHI, Asako KANAI, Kazufumi HAINO, Shusaku HAYASHI, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Maternal Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
胎児鏡下レーザー凝固術(FLP)は,双胎間輸血症候群(TTTS)に対する有効な治療法である.手術によって卵膜の損傷が発生する可能性があり,術後の超音波検査において羊膜絨毛膜剥離(CMS)や,両児間隔膜の穿破(iatrogenic MM, iMM)が認められることがある.CMSは流早産や周産期死亡との関連が示唆されており,iMMでは臍帯相互巻絡による胎児機能不全や偽性羊膜索症候群(PABS)といった合併症が起こり得る.しかし,それらの頻度や予後に関する検討は十分でない.本研究では,FLPによる卵膜損傷に伴う異常の頻度と,異常を生じた症例の妊娠経過を明らかにする.
【方法】
2010年10月から2015年6月の期間に当センターでFLPを施行したTTTS症例を対象とした後方視的研究である.CMSの診断は超音波断層法で子宮壁と羊膜の間に羊水腔を認めるものとし,iMMの診断は臍帯相互巻絡や同一の羊水腔に存在する両児が超音波断層法または肉眼で確認されたものとした.母児の情報を診療録より抽出し,CMSおよびiMMの頻度を調べた.またCMSおよびiMMの有無で分娩時期と児の短期生命予後を比較検討した.統計解析にはFisherの正確確率検定,カイ二乗検定およびMann-Whitney U検定を用いた.また手術時期,手術時間,胎盤位置,羊水除去量,術前の子宮頚管長を交絡因子として,32週未満の前期破水および32週未満の早産に対する調整オッズ比をロジスティック回帰分析で算出した.
【結果】
対象は134例であり,手術時期の中央値は妊娠20週(17-27)であった.分娩時期の中央値は妊娠33週(18-40)であり,6例(4.5%)が22週未満の流産,114例(85%)が37週未満の早産であった.128例(96%)で少なくとも1児が出生時に生存しており,108例(81%)は両児生存であった.
CMSの頻度は28%(38例)であり,CMSの症例では分娩週数が早く(31週/34週,P=0.004),32週未満の前期破水および32週未満の早産が多かった(34%/14%,P=0.006 53%/25%,P=0.0024).32週未満の前期破水および32週未満の早産に対する調整オッズ比は,それぞれ3.71(95%信頼区間:1.43-9.93),3.71(95%信頼区間:1.58-9.01)であった.流産率および児の生存率は,CMSの有無で差が無かった.10例(26%)では超音波断層法でCMSが認められなくなったが,うち2例は32週未満の前期破水を呈し,5例が32週未満の早産となった.32週未満の前期破水および32週未満の早産の頻度は,CMSが持続した症例と同等であった(20%/39%,P=0.44 50%/53%,P=1.00).2例(5.3%)はCMSが両児間隔膜に及んでおり,うち1例はiMMを呈し32週未満の早産となった.
iMMの頻度は9.6%(13例)であり,iMMの有無で流産の頻度,前期破水の頻度,分娩時期,児の生存率に差は無かった.iMM症例の5例に臍帯相互巻絡を認めたが,胎児死亡は無かった.また,PABSは無かった.
【考察・結論】
FLP術後にCMSを認める症例は前期破水や早産のハイリスクであり,CMSの所見が画像上消失した症例においても注意を要する.一方,臍帯相互巻絡を認めた症例であっても,予後は比較的良好であった.