Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション 産婦人科 子宮を診る—超音波検査の可能性と限界—

(S384)

不妊症の子宮内膜血流とその制御

Pathophysiologic features of uterine endometrial blood flow in infertile women

田村 博史

Hiroshi TAMURA

山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学

Department of Obstetrics and Gynecology, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

子宮内膜が薄い症例では妊娠率が低いことが知られており,難治性の不妊症としてその対応に苦慮している.子宮内膜の発育を改善させる目的でエストロゲンや低容量アスピリンの投与が試みられてきたが,十分な効果は得られておらず,“薄い子宮内膜”に対する有効な治療法は確立していない.
我々は,子宮内膜発育に関与する子宮血流,子宮内膜の血管新生に着目し,“薄い子宮内膜”の病態の解明に取り組んできた.当科外来を受診した不妊症患者を対象として子宮血流(子宮放射状動脈および子宮動脈),子宮内膜厚を測定しその関係を検討した.また,黄体期中期に施行した子宮内膜日付診時の余剰の子宮内膜組織を患者の同意の下,研究に供した.子宮動脈血流と子宮内膜厚には相関は認めなかったが,子宮放射状動脈と子宮内膜厚には有意な負の相関を認めた.子宮内膜厚8mm未満の薄い内膜群と8mm以上の正常内膜群で比較すると,薄い子宮内膜群では,①子宮放射状動脈血流が月経周期を通して不良である,②組織学的に上皮と間質の割合を計測すると,腺上皮面積率が低い,③血管内皮マーカー(CD34)の免疫組織染色で血管内皮細胞を染色して血管数を計測すると,単位面積当りの血管数が少ない,④子宮内膜組織中の血管新生促進因子Vascular endothelial growth factor(VEGF)発現を免疫組織染色およびwestern blotting法で評価すると,VEGF発現が少ない,⑤子宮内膜組織をマイクロアレイで発現遺伝子を検討すると,免疫細胞による細胞傷害性やアポトーシスの誘導といった機構が薄い子宮内膜の着床不全に関与する可能性が推察された.薄い子宮内膜では,子宮放射状動脈(子宮動脈の抹消枝)の血流不良から始まり,子宮内膜腺上皮の発育不全,子宮内膜におけるVEGF発現の低下および血管数の低下が重要な病態であることを明らかにした.
さらに子宮内膜が薄い子宮内膜発育不全症例に対して,血流改善作用のある薬剤ビタミンE:トコフェロールニコチン酸エステルを投与することで,子宮放射状動脈血流の改善と,子宮内膜厚の増加を目的とした臨床応用も試みている.ビタミンE投与によって子宮放射状動脈血流が改善し,子宮内膜厚が増加した.さらに,組織学的にも腺上皮面積率の増加,血管数の増加,およびVEGF発現の増加も確認できた.
薄い子宮内膜は,子宮放射状動脈の血流不良が主な病態であり,血管新生や腺上皮発育が障害されていると推察される.子宮放射状動脈の血流を改善させる治療は,子宮内膜発育の促進や着床不全に対する有効な管理法となる可能性がある.